学長室だより

ダビデの物語・ダビデ王位継承史その92

「ヨヤダの子ベナヤは王に答えた。『まことに王の神、主もそう仰せになりますように。主は王と共にいてくださいました。またソロモンと共にいてくださいますように。その王座をわが主君、ダビデ王の王座より更に大いなるものにしてくださいますように。』祭司ツァドク、預言者ナタン、ヨヤダの子ベナヤはクレタ人とペレティ人と共に下って行った。彼らはソロモンをダビデ王のらばに乗せ、ギホンに連れて行った。祭司ツァドクは天幕から油の入った角を持って出て、ソロモンに油を注いだ。彼らが角笛を吹くと、民は皆、『ソロモン王、万歳』と叫んだ。民は皆、彼の後に従って上り、笛を吹き、大いに喜び祝い、その声で地は裂けた。」(列王記上1章36節〜40節)
勅命を受けた後のソロモン党の動きは素早いものでした。ヨアブに代わって軍総司令官となるベナヤは、ソロモンを支える忠誠の言葉をダビデ王に献じています。祭司ツァドク、預言者ナタンとベナヤは、側近の軍人たち、近衛兵である「クレタ人とペレティ人」だけを伴い、ソロモンをダビデ王のらばに乗せ、直ちにギホンの泉に下ったのです。宮廷関係者はアドニヤの祝宴にかり出されていたのですが、ソロモン党は即位式を軍人たちの警護の中で挙行しました。「民」として言及されているのは、ソロモンに仕える従者たちと近衛兵だけです。油を注いで「ソロモン王、万歳」と叫ぶのは即位のしきたりでした。勝利を確信し、いわば勝鬨(かちどき)をあげてエルサレム城内に立ち戻り、城門を閉め、彼らは王宮を占拠したと思われます。アドニヤ党は閉め出されたことになります。(鈴木 佳秀)