学長室だより

ダビデの物語・サウルの活躍その14

後にダビデの無二の親友になるサウル王の息子ヨナタンは、武勇に優れた英雄でした。どのような英雄でも、軍の規律を犯す場合は処罰の対象になります。これは現代に至るまで変わっていません。
ヨナタンはペリシテにゲリラ攻撃を仕掛けて相手を混乱に陥れ、イスラエルを勝利に導いたのです。戦いの前に、サウル王は兵士たちに食物を口にしないで戦うことを誓わせていました。断食はしばしば精神的な高揚を呼び起こし、エクスタシー状態になると言われています。誓っていたので、兵士はだれも食べ物を口にすることができなかったのです。「この日、イスラエルの兵士は飢えに苦しんでいた」(サムエル記上14章24節)と伝えています。
ヨナタンはそれを知りませんでしたし、誓ってもいませんでした。当時、森の中では蜂蜜がしばしば取れたようです。兵士は手を出しませんでしたが、ヨナタンは杖の先に蜂の巣の蜜を浸し、それを手に付けて口に入れたところ(28節)、彼の目が輝いたというのです。部下の兵士が誓いのことを伝えると、空腹では戦えないと父のやり方を批判したのですが、兵士の手前、サウル王はタブーを犯したヨナタンに死罪を申し渡すことになります(44節)。