学長室だより

ダビデの物語・ダビデ王位継承史その102

「この知らせがヨアブにまで届いた。ヨアブはアブサロムには加担しなかったが、アドニヤに加担したので、主の天幕に逃げ込み、祭壇の角をつかんだ。ソロモン王は、ヨアブが主の天幕に逃げ込み、祭壇のそばにいることを知らされると、『行ってヨアブを討て』と命じ、ヨヤダの子ベナヤを遣わした。ベナヤは主の天幕に入り、ヨアブに、『王が、「出て来い」と命じておられる』と言ったが、彼は、『出て行かない。わたしはここで死んでもよい』と答えた。ベナヤはヨアブがこう言って答えたと、その結果を王に伝えた。王は言った。『彼の言うとおりにせよ。彼を打ち殺して地に葬れ。こうして、ヨアブが理由もなく流した血をわたしとわたしの父の家からぬぐい去れ。主が彼の流した血の報いを彼自身の頭にもたらしてくださるように。彼はわたしの父ダビデの知らないうちに、自分より正しく善良な二人の人物、イスラエルの軍の司令官、ネルの子アブネルと、ユダの軍の司令官、イエテルの子アマサを討ち、剣にかけて殺した。この二人の血の報いはヨアブとその子孫の頭にとこしえにもたらされ、ダビデとその子孫、その家、その王座には主によってとこしえに平和が続くように。』ヨヤダの子ベナヤは上って行ってヨアブを打ち殺した。ヨアブは荒れ野にある自分の家に葬られた。」(列王記上2章28節〜34節)
神聖な場所に入り込んだヨアブは助命を願って祭壇の角をつかんだのですが、聖所で殺害されています。流血の報いを受けさせるためとソロモンは語っていますが、王の権威を聖所の神聖な秩序の上に置いているのです。ここから変容の歴史が始まったかのように、歴史家はその事実を簡潔に語っています。(鈴木 佳秀)