学長室だより

2004年4月16日号

学園は新入生を迎えて、まさに「新」学期が始まった。キャンパスの桜は遅咲きであるが、それでも早い枝は五分咲きに近い。
3月19日の卒業式と4月5日の入学式と、双方でヘンデルの「メサイア」の「ハレルヤ・コーラス」が合唱された。卒業式では一般社会人の方がた10名が、在校生代表の約10人とともに、石川美佐子さんの指揮で歌ってくださった。入学式では敬和学園高校の現役の合唱団が、敬和学園高校出身の新入生30名と声を合わせて、同じ合唱曲を演奏した。こちらは、100名をこえる数の若者たち。指揮をとられたのは、荒木京子先生であった。皆さんの協調のうえに成り立った時間であった。
人間は一人ひとりが別である。一人ひとりに個性がある。合唱の営みは、その一人ひとりが個性を殺すことなく、声を合わせて、より大きな、より高尚な全体を生み出してゆく営為である。この春の二つの「ハレルヤ」(「主をたたえよ」)は、いま世界を覆っているエゴイズムの強化、またその正当化をたしなめ、その代わりに世界に、協調と歓喜をもたらす基本は、この「ハレルヤ」の叫び以外にはないのではないか、ということを、考えさせるものがあった。
ひとつの大学の卒業式と入学式は、その学園の行事の域を、はるか超える意味を教えてくれた。(新井 明)