学長室だより

2005年4月1日号

3月18日に第11回卒業式を行なった。141人が元気で学窓をあとにした。この若者たちが母校に「贈呈」してくれたのは、驚いたことに、ユリノキであった。
わたしが着任してから、新入生たちにはユリノキの植樹をしてもらっている。それ以前の学年にはその行事はない。しかしこの春は卒業生たちからの贈呈木が、一本立つことになった。嬉しいことだ。
ホテル新潟で行なわれた謝恩会の席で、わたしはお礼を申し述べた。ユリノキは育ちがいい。この木のように、皆さんもこの世で、すくすくと育っていっていただきたい。この木は、皆さんの成長と繁栄の象徴として、このキャンパスの一角で生きてゆく。幹に名盤を下げるので来学のおりには、声をかけてやってほしい、と語った。
さらにまた、この第11回卒業式は特別の感銘の時間であった。式の最後の部分で柴沼晶子先生への「名誉教授贈呈」が行なわれたからである。その翌日、新潟市内のホテルで、柴沼先生を囲んで「教職課程同窓会」が発足した。先生への感謝が、この会を生んだのだ。
わたしは昨年1月8日に行なわれた柴沼先生の最終講義を忘れることができない。「英国留学で得たもの―安井てつと大江スミの場合を比較して」というタイトルであった。文部省留学生として明治30年代にイギリスに渡った二人である。安井はやがて東京女子大学の学長になる。大江は東京家政学院を創設する。この二人は色合いこそ異なれ、教育の基本をキリスト教に立つ人格教育としたことにおいて共通していた。このことを熱っぽく語る柴沼先生のお姿を仰ぎ見ながら、わたしの脳裏には安井―大江―柴沼という一線がくっきりと引かれた。講演の後、学生有志はヘンデルの「ハレルヤ」を合唱した。
このご講義は「敬和カレッジ・ブックレット」No.11として、最近出版された。(新井 明)