学長室だより

2005年11月4日号

島秋人は強盗殺人の罪で処刑された人物である。1967年のことだから、40年近くも前のことである。獄舎において、「毎日歌壇」に投稿し、選者の窪田空穂に認められる。やがてキリスト教にふれ、受洗。「老いたまふ牧師の指の熱かりき聖句示さる指触れあひて」「はてしなき悔いに耐えかね荒壁に触れつつ聴けりやさしき虫の音」
その島秋人を、花を持って訪ねるひとりの高校生があった。島は深く感動した。その少女は彼の処刑の前日も面会している。彼の歌集『遺愛集』はそもそも彼女の発案によるものである。「七年の毎日歌壇の投稿も最後となりて礼(あや)ふかく詠む」これはその歌集の最後の歌である。
その少女なる方が敬和に来てくださる。福田 (旧 前坂) 和子様である。わたしは3年前の12月、東京の信濃町教会の婦人部の依頼をうけて、クリスマス講話をさせていただいたおりに、お会いしている。中国への出張のために、新発田でお迎えできないのが、悔やまれる。(新井 明)