学長室だより

ルツとナオミ・その14

ルツの口からボアズの名前を聞いたとき、ナオミは「どうか、生きている人にも死んだ人にも慈しみを惜しまれない主が、その人を祝福してくださるように」と祈りを口にしています(ルツ記2章20節)。失意の内にベツレヘムに戻ってきたとき「全能者がわたしをひどい目に遭わせたのです」「全能者がわたしを不幸に落とされたのに」(1章20節、21節)と語った彼女が、ルツとボアズの出会いによって震えるほどの感動を味わったのがよく分かります。「生きている人にも死んだ人にも」という言葉に、亡き夫や息子たちへの想いが込められているからです。
ルツを通して、すべてが神の祝福に転換されることをナオミは予感したのでしょう。落ち穂拾いでのルツとボアズの出会いによって、神のご計画の中に自分たちが含まれていることを確信し、ナオミはルツに細かな指示を与えたのです。神の導きがあるなら、ナオミも祝福され幸せになるとルツも確信したと思われます。ルツの心の美しさ、素直さ従順さがそこに現われています。心の純粋さと身体の美しさが備わっている人を、旧約聖書は美しい(トーブ)と呼びます(サムエル記上9章2節のサウル)。原語には「良い」という意味も含まれます(創世記1章10節)。(鈴木 佳秀)