学長室だより
ダビデの物語・ダビデの台頭史その12
ゴリアトとの一騎打ちは、スポーツと同じく心・技・体の調和がどれほど重要であるかを物語っています。古い時代の武具は近代のものとは異なりますが、この三つの要素が勝敗を決めると言っても過言ではないでしょう。相手を無防備な若造とゴリアトは侮っていたのです。当時の戦士階級にとって、青銅製の鎧や兜が至上の価値を持つことは常識でした。戦場の者たちは皆、ゴリアトがダビデを一撃で倒すと予測したことでしょう。装備に依存するゴリアトに、油断と慢心が潜んでいたことも事実でした。
ゴリアトが身構えてダビデに近づくと、彼は走り寄りながら袋に小石ひとつを入れ、石投げ紐を使い、ゴリアトの兜の目をめがけて飛ばしたのです。ゴリアトは青銅製の剣を抜こうとしますが、石はゴリアトの額に命中し、額に食い込むほどの衝撃を与えたため、彼はうつぶせに倒れてしまったと伝えています(サムエル記上17章49節)。
絶対的な装備で身を守っていたゴリアトは、石投げ紐と小石ひとつで打ち倒されてしまいました。ダビデは走り寄り、ゴリアトの剣を抜いてとどめを刺し、首を切り落としたのです(50節~51節)。ダビデの早業で英雄が倒されたため、動揺したペリシテ軍は恐れて逃げ出しました。(鈴木 佳秀)