学長室だより

ダビデの物語・ダビデ王位継承史その6

独自の解釈を添えたナタンは、再び神の一人称表現で「この者がわたしの名のために家を建て、わたしは彼の王国の王座をとこしえに堅く据える。わたしは彼の父となり、彼はわたしの子となる。彼が過ちを犯すときは、人間の杖、人の子らの鞭をもって彼を懲らしめよう。わたしは慈しみを彼から取り去りはしない。あなたの前から退けたサウルから慈しみを取り去ったが、そのようなことはしない。あなたの家、あなたの王国は、あなたの行く手にとこしえに続き、あなたの王座はとこしえに堅く据えられる」(サムエル記下7章13節~16節)と告知しています。
5節から16節までがナタン預言なのですが、三人称表現での解釈部分(11節b~12節)が差し込まれているため、ダビデの選びという主題がダビデ王家の永遠の選びへと拡大されています。冒頭の神殿建設をめぐる神の反問(5節~7節)が、ダビデ王家への祝福を語るという文脈構成で、神が神殿を建てさせるという宣言に変わっています(13節)。これは編集の結果を表しています。現在のテキストには、神殿建設に批判的な部分(後代の歴史家)と、ダビデの子に神殿を建設させる事態を予見した部分(ダビデ王位継承史)とが混在しています。ダビデ王朝の歴史に神がどのように関わるのか、そこに注意を向けさせる編集になっているのです。(鈴木 佳秀)