学長室だより

ダビデの物語・ダビデ王位継承史その8

ダビデが献げた祈りは神託に対する応答でした。「主なる神よ、いまこの僕(しもべ)とその家について賜った御言葉をとこしえに守り、御言葉のとおりになさってください。『万軍の主は、イスラエルの神』と唱えられる御名が、とこしえにあがめられますように。僕(しもべ)ダビデの家が御前に堅く据えられますように。万軍の主、イスラエルの神よ、あなたは僕(しもべ)の耳を開き、『あなたのために家を建てる』と言われました。それゆえ、僕(しもべ)はこの祈りをささげる勇気を得ました。主なる神よ、あなたは神、あなたの御言葉は真実です。……どうか今、僕(しもべ)の家を祝福し、とこしえに御前に永らえさせてください。主なる神よ、あなたが御言葉を賜れば、その祝福によって僕(しもべ)の家はとこしえに祝福されます」(サムエル記下7章25節~29節)。ダビデのこの祈りを側で聞き取ったのはナタンでした。神の前でダビデが誓約しているように読めます。事実、ナタンによる神託とダビデの祈り全体は「ダビデ契約」という概念で理解されています。ナタンを仲保者として、神とダビデの間に契約が結ばれたという理解です。契約である以上、永遠の保証を確保したものではありません。神への不忠実によって王家の者がこの誓約を破るような場合、神からの契約破棄がありうるからです。(鈴木 佳秀)