学長室だより

ダビデの物語・ダビデ王位継承史その75

「王がアブサロムを悼んで泣いているとの知らせがヨアブに届いた。その日兵士たちは、王が息子を思って悲しんでいることを知った。すべての兵士にとって、その日の勝利は喪に変わった。その日兵士たちは、戦場を脱走して来たことを恥じる兵士が忍び込むようにして、こっそりと町に入った。王は顔を覆い、大声で叫んでいた。『わたしの息子アブサロム、アブサロム。わたしの息子、わたしの息子よ。』ヨアブは屋内の王のもとに行き、言った。『王は今日、王のお命、王子、王女たちの命、王妃、側女たちの命を救ったあなたの家臣全員の顔を恥にさらされました。あなたを憎む者を愛し、あなたを愛する者を憎まれるのですか。わたしは今日、将軍も兵士もあなたにとっては無に等しいと知らされました。この日、アブサロムが生きていて、我々全員が死んでいたら、あなたの目に正しいと映ったのでしょう。とにかく立って外に出、家臣の心に語りかけてください。主に誓って言いますが、出て来られなければ、今夜あなたと共に過ごす者は一人もいないでしょう。それはあなたにとって、……大きな災いとなるでしょう。』」(サムエル記下19章2節〜8節)
軍人は私的な情で戦うことなどできないのを、あなたはご存じのはずですとヨアブは言いたかったのです。息子の死を悲しむあまり、ダビデは王としての立場を忘れていたのです。王に命を託して戦った兵士を侮辱することになる、と彼は警告したのです。(鈴木 佳秀)