学長室だより

ダビデの物語・ダビデ王位継承史その87

「アドニヤは、エン・ロゲルの近くにあるゾヘレトの石のそばで、羊、牛、肥えた家畜を屠ってささげ、王子である自分の兄弟たち、王の家臣であるユダの人々を、ことごとくそこに招いた。しかし、預言者ナタン、ベナヤ、ダビデの勇士たち、自分の兄弟ソロモンは招かなかった。」(列王記上1章9節〜10節)
エン・ロゲルは「布さらしの泉」と呼ばれる場所で、エルサレムの城壁の南に位置し、水の門から死海への道を600メートルくらい下ったところにありました。その場所で、宮廷関係者を招いて「羊、牛、肥えた家畜を屠って」ささげたというのです。招かれなかった「預言者ナタン、ベナヤ、ダビデの勇士たち、自分の兄弟ソロモン」は、アドニヤ派でなかったことは明らかです。「自分の兄弟ソロモン」とあるのは、バト・シェバがダビデ王に生んだ二番目の子です。最初の子は亡くなってしまいましたが、この二番目の子をダビデがソロモンと命名したのは伝承のとおりです(サムエル記下12章24節)。「主はその子を愛され、預言者ナタンを通してそのことを示されたので、主のゆえにその子をエディドヤ(主に愛された者)とも名付けた」(同25節)とあるように、預言者ナタンを通して告げられた託宣によって二つの名が与えられたのです。ソロモンとナタンの関係は彼が生まれたときからのもので、ナタンはバト・シェバと共に重要な役割を果たすことになります。エン・ロゲルでの祝宴は、王位継承を企んだ即位式だったのです。王はまだ存命中でした。(鈴木 佳秀)