学長室だより
2017年度後期入学式式辞(山田耕太学長)
新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。はるばる中国の江蘇省から新潟県へようこそお越しくださいました。新発田市・聖籠町にある敬和学園大学へようこそお出でくださいました。熱烈、大歓迎です。
皆さんは、これから最初の半年間は特に、第一に、日本語を学ぶことに集中してください。言葉は生きていくのに必要な道具です。日本語を学ぶ際には同時に、日本人の考え方や生活習慣に慣れてください。分からない点は友人や先生に訪ねてください。そして日本人の考え方や生活習慣と中国人の考え方や生活習慣の何が同じで何が違うかに注目してください。そしてなぜ考え方や生活習慣が違うかを考えてみてください。「なぜ」「どうして」という問いが、ものごとを探求していく入口になります。
第二に、中国の大学と日本の大学にも同じ点と違う点があります。中国の大学はほとんどが学生数1万人以上の大学です。日本の大学は学生が1万人以上の大学もありますが、その数は50大学で6%ほどです。それよりも学生数が少ない中規模小規模の大学の方がほとんどです。新潟県には17大学がありますが、学生数1万人以上の大学は一つだけです。敬和学園大学は学生数600人ほどの大学で、一人ひとりの存在が大切な大学です。留学生は40人ほどで留学生同士はすぐに仲よくなりますが、日本人の学生とも仲よくすることを心がけてください。
第三に、中国と日本の大学の違いは規模ばかりではありません。大学は講義と演習で構成されています。中国の大きな大学は講義が中心で、学生は教授の講義を一方的に聞き試験で評価されることになります、日本のとりわけ小規模の大学では、講義よりも演習が中心で、試験よりもレポートで評価されることが多くなります。レポートはインターネット上の情報をコピーしたり、まとめたりするのではなく、自分の言葉で考えた自分の考えを書くことを心がけましょう。また、レポートのテーマとして取り上げるのは一般的な知識ではなく、自分が将来いかに生きるのかということにつながる知識をテーマとして取り上げることを心がけましょう。
敬和学園大学では「広く学び、深く考えるリベラルアーツ教育」を基本的な教育方針としています。リベラルアーツ教育は、ほんとうの意味での人間の教育です。精神を自由にする教育です。多面的にものごとを考える教育です。政治・経済・社会・国際関係などは、時間的に早く変わっていく文明の表層にある事柄を対象にしています。それとは対照的に、文学・歴史・文化・哲学・宗教などは、時間的にゆっくりと変わっていく文明の基層にある事柄です。しかし、両者は密接に関係しているのです。例えば、経済を学ぶにしても、それと関係した他の領域の文明の表層の知識、あるいは文明の基層の知識とも密接に関連しているのです。ですから、広く学び、深く考えて、視野を広くしていくことを心がけましょう。
学生時代は自分の知りたい知識を食べたいものから食べるように、知りたいことを貪欲に学んでいきましょう。平飼いの鶏は、ケージ飼いの鶏が与えられた餌を食べるのと違って、自分で食べたいものを食べていっても、自分に必要な栄養を得ています。それと同じように、自分に必要な知識を得ていくのです。20代のころにはバラバラな知識でも、年齢を増していくに従って自分にとって必要な知識が次第に自分の内側でつながっていきます。そのためには大学では自分の考え方を創るための学びの方法を身につけて、いつでもどこでも学ぶ姿勢を持ち続けましょう。
大学で得た学び方の方法論や知識や友達は、一生の宝となります。また、大学での学びを続けていく中ではさまざまな困難に遭遇することがあると思います。それを一つひとつ克服しながら、大学での学びを続けてください。今は収穫の秋で、黄金色の稲が刈り取られていますが、「涙と共に種まく人は、喜びの歌と共に刈り入れる」とあるように、労多ければ、喜びも大きいのです。
リバラルアーツ教育のモットーは「あなたたちは真理を知り、真理はあなたたちを自由にする」です。大学での学びを通して、さまざまなジャンルの真理という本当のことを知って、より精神が解放され、心が自由で寛大な精神を身につけて社会で活躍し、幸福な生涯を送られることを心からお祈りいたします。
2017年9月28日
敬和学園大学長 山田耕太