学長室だより

2008年1月11日号

アルフォンス・デーケンさんといえば、今や死生学の大家であり、新発田にお迎えしようとしても不可能なのではないか、と案じていたが、新発田講演が昨年12月8日に実現した。「生と死とユーモア」。まず人は所有価値ではなく、存在価値に目覚め、日々の生活の質を高めることが必要。少しでも多くの人びとが「愛と平和」のために人生を捧げること、そのための勇気がもてることが大切である。といっても、この演説者は七面倒な理屈は述べない。愛の表現としてのユーモアの重要性を説く。別れ行く人のかたわらに、聴衆一人びとりを呼びよせ、その場に愛のユーモアを生み出してみせる。聴衆はデーケン節に酔い、ときに大笑して、顔を輝かせて、会場を後にした。
会場近くのカトリック教会の会堂をご覧いただいたあとで、山中の宿舎へお送りした。共に会食を楽しみ、お別れした。
翌朝、新発田駅でお待ちした。「いいホテルで、また温泉がいいです。今朝も朝風呂にはいってきました。」明るく手を振って、新潟へ向かわれた。その午後は東京の聖心女子大で講演があるのだという。これがイエズス会神父の姿であった。(新井 明)