学長室だより

ダビデの物語・サウルの活躍その12

戦争時にサウルに従う従者は王のカリスマに信頼しているので、彼らは危険を顧みずに出陣するのです。王は彼らの忠誠心をつなぎ止めておくため、カリスマに即した戦果をあげる形で、王の資質を証明しなければなりません。崇拝されるうちが華ですが、崇拝者の気持ちが失せてしまうと、英雄としての求心力を失い、その指導力は低下してしまいます。
こうした状況の中で、神の助けのみを信じてサウルは戦ってきたのです。陣を敷いたペリシテ軍は戦車3万、騎兵6千、兵士は海辺の砂のように多かったとあり、イスラエルの民はおびえ、洞窟や岩の裂け目などに身を隠し、あるいはヨルダン川を渡って対岸に逃げたと伝えています。サウルに従う兵士は、彼の後ろでおののいていたのです(サムエル記上13章5節~7節)。
サウルは神に執り成しをしてくれるサムエルの到着を待っていたのですが、敵が迫っていることもあり、独断で儀礼を献げたのです。そのことで彼はサムエルの信頼を失ってしまいます。サウルは祭司ではないのに、神に従順であるよりも前に、サウルは自分に従う兵の気持ちに従い、彼らの恐怖心を取り除くため、自分で儀礼を献げたからです(13節~14節)。