学長室だより
2015年度入学式式辞(山田耕太学長代行)
新入生の皆さん、保護者の皆さん、ご入学おめでとうございます。クラークの「トランペット・ヴォランタリ」のファンファーレが、皆さんのご入学を祝して高らかに鳴り響きました。大学の教職員関係者一同、皆さんのご入学を心から歓迎しております。
新入生の皆さん、今から始まる4年間の大学生活は、たった一度しか生きられない人生で、最も大切な時期です。日本は世界一の長寿国です。女性の平均寿命は88歳、男性の平均寿命は80歳、男女の平均寿命は84歳となりました。新入生の多くの皆さんは、今から平均して60年から70年生きることになります。
大学生活で様々な事柄を学ぶ中で、今後60年から70年生きていくために、二つの課題に答えていかなければなりません。それは「精神的な自立」と「経済的な自立」です。大学時代は、この二つの課題に答えて、自分の人生を設計していく大切な時期なのです。
「精神的な自立」とは何でしょうか。それはどんなことに対しても自分の考えをしっかりと持って、自分自身のアイデンティティを確立していくことです。大学で豊かな人間性を養う幅広い学びをし、基礎的な知識を身に着け、自分の考えをまとめて発信する力を身に着けながら、自分の考えにあった生き方は何なのかをはっきりとさせることです。
「経済的な自立」とは何でしょうか。それは自分の考えや自分の生き方にあった職業を得ることです。大学の学びばかりでなく、クラブ、サークル、ボランティア、趣味、旅行、アルバイトなどの経験を通して、キャリアを積み重ねて、生きる力を蓄えていき、大学を卒業する時に自分にふさわしい職業を得て、自活していくことです。
大学は「自己教育の場」です。自分が自分の先生となって、自分を教えることが基本です。もちろん、先生から学ぶことも、友人から学ぶこともたくさんあります。しかし、自分で自分を教えることによって「自立」していくのです。
大学は「共同学習の場」です。ディスカッションを通して他人の意見に耳を傾け、自分の意見を述べることも大切です。友人同士で切磋琢磨して互いに研き合うことも大切です。
大学は「アクティブ・ラーニング」の場です。受け身で学ぶのではなく、自分から積極的に学び、探求し、発信していく主体的な学びの場です。その入り口は「なぜ、どうして」という問いから始まります。その中で自分が納得できる答を見出していく過程が大切です。
本学での学びは「ミッション・ステートメントに記されているように、以下の三点を柱にしてカリキュラムが組まれています。第一に「キリスト教教育」は、学生をキリスト教徒にするのではなく、人類の古典である聖書の教えに基づいて、人間らしい心をもって他者に仕える人間を育む教育です。第二に「国際理解教育」は、外国語教育や専門教育を通して、世界で起こっている様々な出来事が今ここにいる自分とは無関係ではないことを学び「グローバルな視点」で考えることを育む教育です。第三に「地域貢献教育」は、グローバルな視点をもちながらも、ローカルな地域社会の中で人に仕える人間を育む教育です。
本学は中長期計画の柱として「持続可能な地域社会の担い手を育成する」ことを掲げています。地域社会でのアクティブ・ラーニングに一層力を入れていきます。新入生の皆さんは、果敢にチャレンジし続けて、新しい自分を発見し、自分の内側にある秘められた力を磨いて下さい。人との出会いを大切にし、一生の宝となる経験や友人を創って下さい。
今日はキリスト教の暦ではキリストが人類の罪の為に十字架にかけられた聖なる金曜日・“Good Friday”と呼ばれる日です。明後日の日曜日はキリスト教最大の祝日、復活祭・“Easter”の日です。ベートーベンは、シラーの詩に基づいて第九交響曲を作曲しました。その中心的なメッセージは「苦難を通して歓喜に至れ」です。これは十字架と復活の意味を簡潔に言い表した言葉です。使徒パウロはそれを「喜ぶ人と共に喜び、泣く人と共に泣きなさい」(ローマ12:15)と表現しました。私たちも常に「喜ぶ人と共に喜び、泣く人と共に泣く」「共に生きる人」でありたいです。「光陰矢の如し」4年間は瞬く間に過ぎ去っていきます。是非とも悔いのない大学生活を送って下さい。お一人ひとりの人生が有意義で豊かに祝されたものとなりますように祈ります。
2015年4月3日
敬和学園大学学長代行 山田 耕太