学長室だより

2016年度入学式式辞(山田耕太学長)

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入学式で式辞を述べる山田学長

 

新入生の皆さん、ご家族の皆さん、ご入学おめでとうございます。新発田でもようやく長い冬が終わり、花咲き鳥歌う春がやってまいりました。桜の花も皆さんのご入学を歓迎するかのように満開になりました。新入生の皆さんの多くは、青春時代の真っただ中にいます。大学時代は、人生の中で最も重要な時期であることを、最初に自覚していただきたいと思います。大学時代をどう過ごすかで、その後の人生が大きく変わってくるからです。

新入生の皆さんは、二つのことを心がけてください。第一に、「知性を磨く」ことです。「人間は生まれながら知ることを求める」(アリストテレス)存在です。知らないことを知ることは、喜びです。大学は面白いところです。大学ではさまざまなジャンルの知識を学ぶことができます。あなたが最も知りたいことを、受け身にではなく、自分から主体的にアクティブに知ろうという意欲をもって学んでください。「知識は力です」(フランシス・ベーコン)。大学時代に知識を身につける方法と基礎的な知識を身につけ、あなたの今後の人生を切り拓いていく力を蓄えてください。一生の宝となる学びをしてください。

第二に、「友情を育む」ことです。講義や演習などの学びのディスカッションや、クラブ活動、サークル活動、アクティブラーニング、寮生活などの共同生活の経験を通して、切磋琢磨し、助け合い、友情を培っていくことです。大学で得た友人との関係は、「同じ釜の飯を食べた仲間」という言葉がありますが、一生の宝となります。「知性を磨くこと」と「友情を育むこと」を心がけて大学生活を送ってください。

敬和学園大学の教育方針は「ミッション・ステートメント」に記されています。そこには三つの教育方針があります。第一に「キリスト教精神に基づく敬虔な学風の中でリベラルアーツ教育を行い」というキリスト教に基づいた人間教育。第二に、「グローバルな視点で考え」「国際的教養」という国際主義教育。第三に「隣人に仕える…人を育成します」という地域主義です。言い変えれば、一人ひとりを大切にする真の人間教育に基づいて、地球規模で考えて、地域社会に生きていく人を育成するのが敬和学園大学の教育です。

日本人が世界の中で生きていくには、キリスト教ばかりでなく、イスラーム教についても知らなければなりません。キリスト教もイスラーム教も古代ユダヤ教を母とし、そこから分れた姉妹の宗教です。キリスト教徒は世界の人口の1/3(33%)、イスラーム教徒は世界の人口の1/5(20%)、両方合わせると世界の人口73億人の二人に一人(53%)はキリスト教徒かイスラーム教徒です。両者は母なる宗教の旧約聖書の世界観に基づいています。

朗読された聖書(マルコ12:28-34)はイエスの教えを述べた最も重要な箇所です。敬和学園の「敬和」という名前もここに由来します。この背景には、ユダヤ教、キリスト教、イスラーム教の倫理の根幹を示す、モーセの十戒があります。十戒の前半は、唯一の神以外を神としてはならない、神の像を造ってはならない、神の名をみだりに唱えてはならない、七日に一度は仕事をしないで神を礼拝せよ、という神に対する四つの戒律で構成されています。ここは一神教のユニークな倫理の部分です。後半は、父と母を敬え、殺してはならない、姦淫してはならない、盗んではならない、偽証してはならない、隣の家のものを欲しがってはならない、という人間に対する六つの戒律で構成されています。ここは儒教・仏教・神道などの宗教にも共通なグローバルな倫理の部分です。

イエスは、ユダヤ教の教えとは異なり、「何々してはいけない」と否定形で書かれた十戒を文字通り守るのではなく、十戒の本質を愛の精神で解釈したのです。すなわち、十戒前半を「全身全霊で神を愛せよ」、後半を「隣人を愛せよ」と解釈し、「愛せよ」と肯定形の勧めに解釈し直したのです。このような解釈が生まれてくるのは、イエスは神が愛であり、すべての人は神によって愛され、神の愛によって生かされていると理解していたからです。敬和学園高校の初代校長の太田俊雄は、「神への愛」を「神を敬う」、「隣人への愛」を「人と和する」と日本的な文化文脈で解釈して「敬和」と名づけたのです。大学では校歌の冒頭で歌われているように「人と和する」を「人に仕える」「人をもてなし(ホスピタリティ)奉仕する(サービス)」とさらに現代的に解釈し直しています。

新入生の皆さん、敬和での大学時代にしっかりと学んで友情を育み、隣人にサービスする精神をしっかりと身につけてください。大学の中でも社会の中でも、人種や言語の違い、年齢や男女の違い、貧富の差などで人を差別せず、特に障害の有無や能力の違いなどで人を差別する、あらゆる偏見から解放されて、すべての人は等しく尊いという精神を身につけてください。少子高齢化の人口減少社会で、すべての人が共に助け合って生きる、共生社会をつくっていく人となってください。パウロの第一コリント書の結びの言葉をもって、式辞の結びとします。「何事も愛をもって行いなさい」(Ⅰコリント15:14)。

2016年4月5日
敬和学園大学長 山田耕太