キャンパスライフ

さようなら、佐藤渉先生 ~先生が時間をかけて残してくれた良きもの~[2020-03-31]

佐藤渉教授がこの春をもって敬和学園大学を退職されました。

砂丘を旅する佐藤渉先生

砂丘を旅する佐藤渉先生

 

1991年の開学年度から29年間にわたって、フランス語、フランス文学・文化を教授され、本学のためにご尽力くださいました。
本学では1995年度よりフランス語、ドイツ語も英語と並んで集中的に学べるようになり、先生はフランス語教育に力を入れてくださいました。
授業では、言語だけでなく歌や映画などさまざまな教材を活用してフランスについてのすべて(ひと・文化・社会・歴史)を学べるように工夫され、ゼミでは映画や絵画、アニメなどの視覚素材をことばに書き換えるという試みをなさっていたそうです。

授業風景(佐藤渉先生)

授業風景(佐藤渉先生)

 

先生の授業を履修した学生が春休みにフランスへ出かけると、何日間もパリの街を案内され、多くの学生が至福の時を過ごしてきたようです。

卒業生にパリの街を案内する佐藤渉先生

卒業生にパリの街を案内する佐藤渉先生

 

フランス語はもとより、文学、哲学、精神分析学と先生の研究は広範に及びますが、同時に、その一つひとつの研究対象に没頭され、深く掘り下げてゆかれました。パリでの博士課程在籍時代、「風立ちぬ」の詩句でも知られる詩人ポール・ヴァレリーの何万ページにも及ぶカイエ(ノート)を読みこむため、大学図書館に通いつめ、身なり構わず籠りきったがゆえに「図書館の怪人」という異名をとったとのこと。そのエピソードの中のヴァレリーに没頭される先生のお姿は、本学でも周到な準備をして授業に臨まれる姿勢や人事の際に多数の論文の査読に没頭されるお姿に自然と重ね合わされてゆきます。

 

最終講義では、ギリシアの格言「汝、汝自身を知れ」を引いて、ご自身の2つの原点から自分を知るという試みから話し始められ、絵物語、映画、夢、無意識の場合を例にとり、イメージとことばが相互に連関し行き来する微妙で繊細な作用を話されました。

佐藤渉先生の最終講義(2020年1月24日)

佐藤渉先生の最終講義(2020年1月24日)

 

夢の形成や映画の制作作業はテクストのイメージ化であり、フロイトやラカンの理論を紹介しつつ、夢分析や映画を観ることはイメージをことばに換えることという具体的な説明もあり、言葉の研究をする者にとって刺激的な講義でした。
先生は最後に「イメージが氾濫するこの時代、この社会でイメージとどう向き合うか?」との問題提起をされ、ミシェル・トゥルニエやサン=テグジュペリを引用されました。イメージとことばの間を研究してきた先生からは、やはり文字を読むこと、そして行間を読むことの重要性を示唆されました。

最終講義で佐藤渉先生に質問される金山愛子先生

最終講義で佐藤渉先生に質問される金山愛子先生

 

大学の管理運営面では、図書館長、入試委員長、国際文化学科長、学生部長と長きにわたって要職に就かれ、尽力されました。何事にも怒ったり動じたりされないその安定感はどこから来たのか?とおたずねすると、「多分、砂漠にいたから」とお答えになられました。砂漠では怒ったりしていたら命にかかわるとのこと。先生の柔和なお人柄を知る鍵は砂漠にあるようでした。

 

チャペル・アッセンブリ・アワーでも何度かご講演くださいました。一度、新入生にご自身の砂漠での体験や『星の王子さま』についてお話しくださったことがあります。友情を育むには時間がかかることや「一番大事なものは目に見えない」ことなどと共に、この「小さな王子」は作者サン=テグジュペリの早逝した弟をシンボリックに表しているとのエキサイティングな解釈を披露してくださいました。また、同じお話の中の最後のほうで、パワーポイントによって、作者による挿絵の一つをご紹介くださいました。誰もいない砂漠を描いた有名な挿絵、かけがえのない者を失ってしまったことの透明な悲しみに溢れたあの挿絵です。
その絵に、作者の悲しみと共に、佐藤先生ご自身の悲しみ(天に送られた最愛の奥さまへの愛)を思わずにはいられませんでした。

誰もいない砂漠(『星の王子さま』より)

誰もいない砂漠(『星の王子さま』より)

 

先生の柔和さは、「悲しみ」を知るがゆえではなかろうか。「砂漠にいたから」のお言葉は、「悲しみを知っているから」と読み換えることもゆるされるのではないだろうか。大切な人と、いつまでも一緒にいられるわけではないから、そうであるがゆえに、大切な人(友)といる、敬和における今この時を、かけがえのない一期一会の時として慈しんでほしい。そんなメッセージが先生のお話の行間から響いてきました。実際に敬和において、先生は、私たちに対してそのように接してくださったのでしょう。些事に動ぜず、学生一人ひとりを、また同僚一人ひとりを、心をこめて慈しんでくださった先生こそ、本当のジェントルマンということができるとの思いを今更ながら強くしております。

佐藤渉先生が大切にされた、最後のゼミ生より花束の贈呈(最終講義)

佐藤渉先生が大切にされた、最後のゼミ生より花束の贈呈(最終講義)

 

先生の長きにわたるお働きに感謝しつつ、今後のご健康とご活躍をお祈り申し上げます。先生の残してくださった良きものを、未来に向けて継承してまいりたいと存じますので、今後とも敬和学園大学の歩みをお見守りいただけましたら幸いに存じます。 (宗教部長 下田尾治郎、学長補佐 金山愛子)

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