チャペルのひびき

暗く深い森の中から

チャペル・アッセンブリ・アワーは、山田耕太先生(学長)が、心に残るメッセージを語ってくださいました。学長先生がお話しくださったことの一つは、14世紀イタリアの文豪詩人ダンテの『神曲』を見事な文語に翻訳された新発田出身の山川丙三郎先生のことです。山川先生は、新潟の北越学館で学んだ後、東北学院予科に進まれ、米国留学等を経たのち、東北学院大学の先生となられた方。ダンテ研究一筋に打ち込まれたその尊きご生涯を知ることができたことは、まことに幸いでした、自分の生涯を賭けるほどの対象に出会い、そのために情熱を傾けることのできた幸福、しかしまた、それゆえに味わったであろうあまたの試練に思いをはせました。学長先生は、残りの時間を使われ、『神曲』の内容そのものについてもお話しくださいました。『神曲』はダンテ自身が、偉大な師、ヴェルギリウスに導かれて、地獄、煉獄を巡り、やがて天国に至る旅路を記した物語。壮大なスケールにおいて人生の意義を問いかけるこの作品は、後代の芸術家たちにも、大きな影響を与えたことを、ミケランジェロの絵画や、ロダンの彫刻を通して、学長先生は教えてくださいました。この作品においては、ダンテが人生の道半ばに暗くて深い森の中に迷い込んでしまったところから、その旅が始まるのですが、コロナ禍のただ中におかれた私たちもまた深く暗い森の中にいるといってもよいのではないでしょうか。けれども、その深く暗い森の中からこそ始まる旅がある。今こそ、人が生きることの本当の意義を問い始めるにふさわしい時ではないか。とりわけ逆境の中に置かれている若き魂にとっては。そのことをダンテの作品を通して学長先生は力強く教えてくださったように思います。(下田尾 治郎)

Ⅰ.チャペル・アッセンブリ・アワー 
説教 「《ダンテ没後700年記念》忘れられない新発田のダンテ研究家:山川丙三郎」 学長 山田耕太 先生
20210129チャペル・アッセンブリ・アワー1

<参加学生の感想>
感想1) 今日は山田学長から「忘れられない新発田のダンテ研究家:山川丙三郎」と題して説教を受けました。私はそもそもダンテのことも知らなかったので、今日のお話で3人の人物に対する知識を得ることができました。山川さんは、自分の好きなこと、得意なことを伸ばしていくことのできる人みたいで、得意の英語を伸ばすためにたくさん勉強をして、最終的には英語を母国語にしている人たちに教えることができるくらいまでになったことに感激しました。自分も山川さんのように自分の才能を伸ばすことのできる人間になりたいなと強く思いました。
感想2) 「たった一度しかない人生をどう生きるか」という山田学長の問いかけに対する完璧な答えを私はまだ持ち合わせていない。私の歩む人生でしたいことはたくさんある。留学や語学の勉強、歴史や文化を知る等、自分が持つ飽くなき欲求を満たしたいと思っている。だが、成長するにつれて“現実”を知り、抱いていた夢への厳しさを知った。あんなに輝いていた夢なのに狭き門だと分かると途端に気持ちがなえ、やめてしまおうかと諦めたくなってしまう。そして、そこで自分の弱さを自覚し自信を失っていく。そんな私が“唯一の人生”を歩むことは簡単ではない。多くの後悔や失敗、喜びを経て今日まで生きてきた。そのおかげでよい出会いに恵まれることが増えた。まだまだ知らないことばかりで未熟者であるが、少しでも後悔のない日々を過ごせるように努力していく。
感想3) 今回は学長先生から「忘れられない新発田のダンテ研究家」という題でお話をお聞きし、ダンテという人物が存在し、ダンテを研究する日本人もおり、その一人が今回のお話で登場した山川丙三郎という人物であることを知りました。新発田という地域からイタリアという異国の人物に興味を持ち、研究した人がいるということを知り、関心を持つことや研究対象となるものの間に生まれた地域や年齢などは一切関係がないのだと感じました。また、ダンテを調べた山川丙三郎、その山川を調べた学長先生がいるように、一つの連鎖が起きているのをおもしろく感じました。そして、一つのことを調べるだけで無限の情報が木の根のように連なっているということを知ることができました。さらに学長先生のお言葉の中で山川丙三郎の存在は新発田の人たちからも忘れ去られ始めているということを聞き、今回の講義のように忘れかけられている人物について学ぶことができるのはとても意味のあるものだと感じました。