チャペルのひびき

かけがえのない体験を与えてくれる読書という行為

チャペル・アワーは、田中利光先生(共生社会学科教授)が旧約聖書「イザヤ書」をもとに、預言者という存在について教えてくださいました。預言者とは、未来を予言する存在ではなく、現在の危機のただ中において、神の言葉を王や民たちに語り伝えるべく立てられた者たちのこと。眼前にそびえる壁ゆえに、頼るべからざるものに頼り、誤った方向へと突き進んでしまいがちな人々に、真に頼るべき方を指し示し、その方への信頼を軸に、危機的状況を乗り越えてゆくことの大切さを教えたのが預言者でした。コロナ禍の不安のただ中で、ともすれば、判断を誤り、頼らざるものに頼ってしまうこともありうる私たちにとって、耳を傾けるべきメッセージでありました。引き続くアッセンブリ・アワーは、開学当初より私たちをご指導くださり、今年度3月末日をもって退任される桑原ヒサ子先生(国際文化学科教授)の最終講義の時として持たれました。ドイツ文学者であられる先生は、ミヒャエル・エンデの代表作『はてしない物語』の精緻極まる解釈をお示しくださることにより、文学作品を読むとはいかなる行為であるかを教えてくださいました。優れた文学作品を読むことは実人生にもまさる濃密な体験であり、そのような読書体験は私たちの人生を変えるほどの豊饒なるものである。先生のこのメッセージに心よりの賛同の意を表したく思います。先生の長きにわたるお働きに感謝しつつ、新たなお歩みの上に神さまの祝福をお祈り申し上げます。(下田尾 治郎)

Ⅰ.チャペル・アワー 
説教 「頼るべきところ」 教授 田中利光 先生
20210122チャペル・アッセンブリ・アワー1

Ⅱ.アッセンブリ・アワー
講話 「読書のすすめ-文学作品を読もう!-」 教授 桑原ヒサ子 先生
20210122チャペル・アッセンブリ・アワー2

20210122チャペル・アッセンブリ・アワー3

<参加学生の感想>
感想1) 田中先生からの説教の中で、しっかりと自分の考えを持つことが大切だということを学びました。さまざまな社会状況において世論というものはいつも生まれると思います。特に私たち日本人は周りの意見に合わせてしまい、自分自身の声を世に発信するということをあまりしません。しかし、世論に合わせて流されてしまい、自分の本当の思いを殺すことはいけないと気づきました。そのためには「信仰」と物事の本質を見ることで、正しい判断ができるようになると学びました。
感想2) 桑原先生の最終講義を受けました。本を読む人によってその本の感じ方や考え方が変わるという意見、本は二度と同じように読むことはできないということを聞いて全くそのとおりだと感じました。「はてしない物語」といういかにも長そうで自分からは読もうと思わない本の紹介をしてくださったおかげで、自分には無縁だと思っていた本に興味を持つことができたと共に、本の内容も知ることができ、とてもためになりました。
感想3) 田中先生による説教では「頼るべきところ」をテーマにユダヤに関する歴史を学びました。ユダヤ民族は預言者としてさまざまな場面で活躍し紀元前の世界がさらに豊かな場所になるように貢献してくださいました。現在新型コロナウイルス感染の影響で多くの人々の健康や命が危険な状態にあります。またアメリカでは新政府が新しい政策を取り仕切ろうとしています。世界が変革している中で不安を感じている人も多くいます。自分の考えや主張を発信したり、誰かの幸せのために活動をして、隣人のために精一杯生きたいと思いました。
感想4) 読書をしている中で、私もさまざまな体験をしました。子供から大人で違う体験をするというのは私にも覚えがあります。「ぼくらの七日間戦争」を初めて読んだ時、私は小学生でした。大人に反抗して廃工場に立てこもる主人公たちにとても興奮しました。それは現実でうまく自分の気持ちを表現できなかったことからの気持ちかもしれません。高校生の時同じ本を読む機会があり、すると主人公たちの行動が少し幼稚に見えました。年齢を重ねさまざまな経験をして、ある時持っていた輝かしい金地は薄れてしまったようです。私は桑原先生の講義を聞いてそのことを思い出しました。桑原先生に最大限の感謝をささげたいです。やはり、本の力は偉大ですね。