チャペルのひびき

生き直す力としてのレジリエンスを養うもの

チャペル・アワーにおいては、リベラルアーツとキリスト教教育を結ぶキーワードとしてのレジリエンス(近年、「再起力」、「折れない心」といった意味において用いられることの多い)という言葉に焦点を当ててみました。リベラルアーツ教育の一つの効果として、複眼力を養うことが挙げられます。このことは、生きる力としてのレジリエンスを培うことでもあることを、オーデンという詩人の詩に描かれたブリューゲルという画家の「イカロスの失墜」という絵をもとにお話しいたしました。人生において未来への展望が開けなくなってしまうような時、視点を変え、世界を異なる光のもとで読み直すことをとおして、未来が開かれ、歩み直す力が与えられることもあるのです。聖書が語るメッセージも同様です。終わってしまったかのように思える人生であっても、神さまの愛の光の文脈において、読み直すことができるのだということ。そのことをとおして、希望の内に歩み直すことができるのだということを、聖書は語ります。聖書の中には、そのようにして、折れてしまった心を接ぎ直され、歩み直していった人々のエピソードがたくさん記されているのです。キリスト教の伝えるレジリエンスのメッセージに、ぜひ、触れていただきたく思います。引き続く、アッセンブリ・アワーは、前期エッセイ・コンテスト授賞式ならびに、受賞エッセイ朗読の時として用いられました。いずれのエッセイも、チャペル・アッセンブリ・アワーにて語られたことに、ご自身の深い省察を重ねられた優れた作品でした。(下田尾 治郎)

Ⅰ.チャペル・アワー 
説教 「立ち直る力の源」 宗教部長 下田尾治郎 先生

Ⅱ.アッセンブリ・アワー
前期エッセイ・コンテスト授賞式

<参加学生の感想>
感想1) 今回のお話の中でイカロスの失墜という絵を見た。イカロスが悲劇に見舞われている一方で、農夫が畑を耕しているのどかな風景が描かれていて、とても対照的な絵だと感じた。この絵は絶対的な悲劇的状況も相対化して見ることによって、心の持ちようを変えることができるというメッセージがあるということを学んだ。このことから、世界のありようは、自分の物事の見方のありように左右されていくのだと考えた。自分が困難に直面した時は、一つの視点のみにとらわれて考えるのではなく、自分が前を向いていけるような物事の見方に切り替えて、苦しい状況を打開したいと思う。今回学んだ複眼思考を、これからの人生のさまざまな場面で役立て、折れない心、レジリエンスを獲得したいと思った。
感想2) レジリエンスという言葉は確かに最近よく聞くようになりました。何か失敗したり、嫌なことがあっても人生はまだこれから続くので、くじけないで立ち直ることを意識したいと思いました。視野を広げることが大切だと思いました。リベラルアーツ、キリスト教主義にもそのような考え方が含まれていることを初めて知りました。「人生は敗者復活戦だ」という言葉が心に響きました。人生は勝者ばかりじゃない、よいことばかりじゃないと思えば、多少嫌なことがあっても乗り越えられると思い、励みになりました。学長賞を受賞した西村さんのエッセイは、貧困という問題から自分は何ができるか、と話を広げており、視野の広さを感じました。チャペル賞を受賞した今野さんのエッセイは、戦争と平和をテーマに掲げていました。見ぬふり、聞かぬふりをせず、現実と向き合い、平和をつくり出す一歩を踏み出すことが大切だと思いました。また、アッセンブリ賞を受賞した坂内さんのエッセイを聞いて、改めて失敗を恐れずに挑戦することが大切だと思いました。失敗も成功のもとだと思い、がんばっていきたいです。