学長室だより

2020年度後期入学式式辞(山田耕太学長)

20201001後期入学式1

山田学長からの式辞

 

敬和学園大学ご入学おめでとうございます。秋らしい天気となってまいりました。今大学の周りの田んぼでは最後の稲刈りをしています。今日の入学式を楽しみにしておられたのではないでしょうか。社会人としてハローワークや社会福祉施設での長い経験を踏まえた上で、本学で学ぼうとされている尊いお志に深く敬意を覚えます。またその中で地元の大学である本学をお選びくださいましたことを心から感謝申し上げます。

敬和学園大学は今から30年前に国際文化学科と英語英米文学科の2学科で構成された人文学部1学部の単科大学として始まりました。今から16年前に共生社会学科を新設して、英語英米文学科を英語文化コミュニケーション学科に名称変更し、3学科体制にいたしました。

わが国における社会福祉学のそもそもの出発は経済学の一分野である経済政策から始まり、それに社会学・法学・心理学などの関連した学問分野とリンクして社会福祉学という学問分野が形成されてきました。このような経緯のゆえに、日本のほとんどの大学では社会福祉の学びは、社会福祉学科という名称で、社会科学系の学問分野である社会福祉学部の中に位置づけられています。

しかし、本学では社会福祉学科という名称ではなく、共生社会学科という名称で、社会科学系の学部ではなく人文学部という人文系の学部の中に位置づけられています。それはどうしてなのかと言いますと、社会福祉を学ぶ上では、現代では価値観と理論と実践の3つが大切であると言われます。本学では現代の現場で求められている価値観にも重点を置いているからです。すなわち、リベラルアーツ教育による幅の広い視野と人間観・価値観に基づいた上で、理論と実践を学ぶという意味で、人文学部の中に位置づけているのです。

また、従来の高齢者福祉・児童福祉・障害者福祉という縦割りの福祉論ではなく、地域福祉に基づいた福祉ならびに福祉マインドに基づいた起業などによる福祉ビジネスまでも視野に入れた新しい福祉コンセプトを表現するために、社会福祉学科ではなく、共生社会学科という名称にしたのです。

そこで社会福祉士を目指す上では、国家試験受験資格の福祉19科目を学ぶことが第一ですが、そればかりでなく、視野を広くし価値観や人間性を養う意味でも、ご自分の問いと関心に基づいて幅の広い学びに挑戦していただきたいと思います。

その学びの原点になる指針として、先ほど読んでいただきました「求めなさい、そうすれば与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる。門をたたきなさい。そうすれば開かれる」(マタイ福音書7章7節)を心がけていただきたいと思います。「求める」すなわち「探求する」きっかけとなるのは「問い」です。ご自分の疑問を大切にしてください。問いには、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「どうした」という「確認の問い」と「なぜ」「どうして」という「探求の問い」があります。

「問い」が探求の入り口です。「確認の問い」で確かめた上で、「なぜ」「どうして」という「探求の問い」に入っていきます。そして「探す」すなわち「調べる」ことが始まります。調べる方法もいろいろあります。何のために調べるのかというと自分で納得のいく回答を得るためです。自問自答を繰り返して探求する中で、自分で納得できる回答が簡単には見つからないかもしれません。回答の方向だけでもつかめればよしとすることもあるかもしれません。いくつものレポートを毎学期書いていく中で、4年間の中でご自分にとってどうしても知りたいという課題が1つか2つか出てきたらそれを卒業研究や卒業論文のテーマとするのもよいでしょう。問いをもち続けること、問いを心の中で温め続けることを心がけてください。

「求めよ、さらば与えられん。尋ねよ、さらば見出さん。門を叩け、さらば開かれん。」本学での学びが充実したものとなり、その後の人生にとって幸いな時となることを心からお祈りいたします。本学には8人の社会人学生が在学しています。それらの方々を学びの友として、また若い人々と共に豊かな時をお過ごしください。ご入学おめでとうございます。

2020年10月1日
敬和学園大学長 山田耕太