学長室だより

2003年11月14日号

むかし東京の大学で、わたくしから教わったことのあるという方から、お便りがあった。初夏のことである。秋、アメリカへ移るのですが、その前に結婚式を挙げます。その式にご出席いただけませんでしょうか、ということであった。秋の予定をめくってみると、その日は新発田を空けるわけにはいかない週末であった。しばらくして、お便りがあり、それではわたくしのほうから、お訪ねしてもよろしいでしょうか。そう言って、わたくしの都合のつく9月末の土曜日に、かの女の大学時代のサークルの友人と二人で北越の地に来られた。来られる前のお便りで、「文学で“人の心を学ぶ”ことを教えてくださって、ありがとうございます。先生にご指導いただけて、本当によかったと思っています」と書いてこられた。わたくし自身はそんな難しいことを教えた記憶は、まったくない。しかし、これからニューヨーク市へ発つという、かっての学生と、月岡温泉で夕食を共にした日のことは、忘れ難き思い出として記憶に残ることであろう。(新井 明)