学長室だより
2006年12月8日号
関越道の川口インターを降り、国道117号線を津南へ出る。そこからさらに405号線を、一路、魚沼の奥山へと上って行く。もう少し行けば信濃の国にはいるところ、鈴木牧之(ぼくし)の『北越雪譜』で名高い秋山郷だ。その豪雪地に、日本一小さな修道院がある。聖BERNARDO新教修道院。11月24日のチャペル・アセンブリ・アワーに、院長・伊原淳子氏にお出でいただいて、「“辺境”の山岳聖地に祈る」を語っていただいた。前日、山を降りるときは、すでに雪であったという。
日本女子大学・国文学科では泉鏡花の研究で大学院を出たという伊原さんは、ある日系人宣教師との出会いで、キリスト教にふれる。20年、僻地に生きて、創造者の心を指差しつつ、生きてこられた。雪との戦い、スズメバチとの共生、 霊水のめぐみ、などの話を交えつつ、若者たちに経済効率第一主義の世界を超えた、別の世界があることを語ってくださった。「祈れよ、献(ささ)げよ、労(はたら)けよ。」
いまの日本で、いちばん求められているのは、この生き方ではないのか。翌日、わたしは良寛の五合庵へ行った。(新井 明)