学長室だより

2002年5月10日号

アメリカのパウエル国務長官がパレスチナへ出かけて懸命の調停にあたりましたが、イスラエルとパレスチナは和解できず、その地域の住民は死と隣り合わせの毎日を送っています。これまでの行きがかりを捨てて和解するというのはそれほどに困難なことです。湾岸戦争を勝利に導くことのできた人でも、積年の民族間の憎しみの解決はできない、ということです。2000年の昔、あの地域に現れたナザレのイエスが「目には目を、歯には歯を」というユダヤ教の原則に対して、「汝の敵を愛せよ」という新しい原則を教えたことは、まさに革命的なことであったことがわかります。北アイルランドの状況が示すように、クリスチャンであるからといって、敵を愛することは簡単にできるものではありませんが、それでもなお、「汝の敵を愛せよ」という考え方を除外して究極的な和解への道はないと僕は思います。(北垣 宗治)