学長室だより

旧約聖書における「目には目を、歯には歯を」

「目には目を」は、古代メソポタミアでは、復讐の拡大を防ぎ、他人に危害を加えると、金銭でなく自分の肉体をもって同じ害を償うことを義務づけ、自由人に尊厳ある行動を勧めるものでした。旧約聖書も同じ文化(レビ記24章18節、20節)を継承していますが、その他に、偽証によって同胞に危害を加えることへの警告として、また喧嘩の巻き添えで妊婦に危害を加えてしまった場合に取るべき責任として、計三箇所で語られています(申命記19章19節~21節、出エジプト記21章22節~25節)。その状況でのみタリオ(同害報復)を命じているのです。
申命記では「……そのまま彼に対して行なわなければならない。……そうすれば他の人々は聞いて恐れ、二度と……このような悪しきことを行なわないであろう。あなたの目が憐れみ見てはならない。いのちにはいのちを、目には目を、歯には歯を、手には手を、足には足をである」(私訳)と、裁判を担う者に、偽証人を憐れんではならないと命じています。出エジプト記では、「火傷には火傷を、切り傷には切り傷を、打ち傷には打ち傷を」が加えられ、母胎を守ろうとする強い姿勢が打ち出されています。(鈴木 佳秀)