学長室だより

2002年12月20日号

今年も学生たちと一緒にE.M.フォスターの『インドへの道』を読みました。異文化を理解しようという善意と意欲があっても、異文化が自分を本当に受け入れてくれるとは限りません。この小説にいちばん強力な光をあてるのは、彼のエッセイの中に出てくる 「もしも祖国を裏切るか、それとも友人を裏切るかの選択を迫られるなら、私は祖国を裏切るだけのガッツを持ちたいものだ」という、有名な言葉でしょう。この言葉があの小説の意味を説明します。ぼくはここに含まれた思想を勝手に「フォスター主義」と名付け、国際交流はこの思想に基づかない限り根無し草に終わるのだと主張しています。ぼくの理解するところでは、フォスター主義こそがリベラリズムの極致なのです。(北垣 宗治)