学長室だより
羊飼いの少年
ライオンの餌食になった羊をその口から取り戻したことのある少年の一人が、あのダビデであったことはよく知られています(サムエル記上17章34節~37節)。彼がイスラエルの歴史に登場するきっかけになったのは、生ける神をののしるペリシテ人ゴリアテとの一騎打ちでした。武人としてサウル王に仕えていた兄たちから見れば、末っ子の彼はまだ少年と見られていたようです(28節)。熊だけでなく、彼は父の羊を襲うライオンと戦い、そのたてがみをつかんで撃ち殺したと語っています(35節)。頑丈な杖と投石袋を手に、羊飼いは羊や山羊等の群れを放牧していたことが分かっています。
少年ダビデが、青銅の鎧兜で身を固めた敵将ゴリアテを一撃で倒したのは、杖ではなく、投石の袋と紐を使い小石を相手の額に命中させたからです。昏倒したゴリアテを(49節)、その手にあった青銅の剣を奪って首をはねたと伝えています(51節)。
この地域で育つ小家畜飼育者の少年は、羊飼いをしながら父の家を助け、また雇われてよその群れを放牧するのが普通でした。命の危険と隣り合わせの仕事であったことが分かるのではないでしょうか。実は少女も羊飼いとして働いていました(創世記29章9節)。これも驚きです。(鈴木 佳秀)