学長室だより
自由と規律
透き通るような新緑が鮮やかなころとなりました。五月やツツジの赤紫色の花が満開です。夕暮れにはコウモリが飛び交います。田植えが終わった田とこれから田植えの田に水が入り、大きな碁盤の目の湖のようです。
入学式以来、初めてのオリエンテーション、初めての授業、初めての大学生活と緊張が続いていました。ゴールデン・ウィークでようやくホッと一息ついて、次第に落ち着いてきたころではないでしょうか。本格的な学びに身を入れていきましょう。
本学では「リベラルアーツ教育」に力を入れていることは、入学前からご承知のことと思います。「リベラル」すなわち「自由な」と「アーツ」(複数形で諸科目の意味、”fine art”=「芸術」の意味ではありません)という言葉に基づく古代ギリシア・ローマの「自由人の教育」の「自由学芸」すなわち「自由7科」に由来する教育です。
それは「言葉の学」(文法学、修辞学、論理学)の文系三科と「数学」という「代数学、幾何学、天文学、音楽理論」の理系四科で構成されていました。時代の変遷とともに教育内容は変わりました。現代流に表現すれば、言葉によるコミュニケーション力とデータに裏打ちされた世界や宇宙を俯瞰する力を養う教育と言えるでしょう。
リベラルアーツ教育の目的は自由です。それを放縦や無秩序とはき違えてはいけません。サッカーやラグビーでは規則を守ってゲームが展開し、規則を破るとペナルティが科されるように、規律を守る徹底した訓練の上に自由があります。詳しくは、古典的な名著の池田潔『自由と規律』(岩波新書)をご覧ください。(山田 耕太)