学長室だより
ユーモアの精神
ニュートンのりんごの木に花が咲きました。29年前の大学開学式で客観的な学問の精神の象徴として、ニュートンが万有引力を発見したニュートンの生家にある木の孫の木の植樹式をしました。以来毎年リンゴの実をつけています。イギリスのリンゴは、緑色の調理用のリンゴなので、生で食べてもおいしくありません。
先週のチャペル・アッセンブリ・アワーでカトリック吉祥寺教会の後藤文雄神父のドキュメンタリー映画『father』を見て、後藤神父のお話を聞きました。長岡空襲で母親や兄弟を亡くし、住職の父親との確執の中で、初恋の女性によってカトリック教会に導かれ、戦災孤児との出会いの中で神父となり、山谷での支援活動に携わった後でカンボジア難民支援に関わり、カンボジアに学校を建ててきた生涯が紹介されました。
講演の最後に、後藤神父の友人である上智大学のデーケン先生のお母さんの最期のエピソードを紹介して、ユーモアの精神を忘れないようにという言葉で締めくくりました。このエピソードは12年前の本学でのデーケン先生のクリスマス講演『生と死とユーモア』の結びの別のエピソードを思い出させました。
ナチス・ドイツに対する抵抗運動のリーダーであったデーケン先生のお父さんは、生死を分けるような緊迫した生活の中でも、子供たちに対してユーモアの精神を忘れなかったというエピソードです。ユーモアの精神とは、人を笑い者にするのではなく、人の前で自分を笑い者にすることができるほど自分を客観的に観ることのできる精神です。(山田 耕太)