学長室だより

「悪魔の飽食」と「海と毒薬」

朝夕冷え込んできてコートが必要な季節になってきました。キャンパスの桜の葉も銀杏の葉も散っています。沖縄の首里城の炎上には心が痛みます。パリのノートルダム寺院の再現を思わされました。

先週27日日曜には、新潟市で森村誠一作詞、池辺晋一郎作曲「悪魔の飽食」という合唱組曲が上演されました。これは今から38年前に書かれた森村誠一のドキュメンタリーを音楽化し、毎年都道府県単位で全国を回って地元の人が歌って上演しているものです。

太平洋戦争中に日本軍が現在の中国東北部黒竜江省ハルビンの郊外で、3,000人もの日本に抵抗運動をした中国人捕虜などを「丸太」と呼んで実験動物以下の扱いをしていました。このドキュメンタリーはさまざまな種類の細菌を使って、むごたらしい人体実験をして死に至らしめ、細菌兵器を開発した731部隊の活動を明らかにしたものです。

私はベストセラーとなったこの著作が出版された当時、日本にいなかったので、最近手にして読み大きな衝撃を受けました。同時に一冊の本とそれに基づいた映画を思い出しました。遠藤周作の『海と毒薬』です。戦時中に九州大学医学部でアメリカ人捕虜などに対して生きたまま人体実験をして死に至らしめた実話を小説にしたものです。両方とも医師がすべてを指示して行った人体実験です。倫理観のない科学者が犯す人間の罪深さを改めて思わされました。すべての人は等しく尊いという人権教育の大切さを改めて実感しました。(山田 耕太)

2019.11.8学長ブログ

『悪魔の飽食』(敬和学園大学図書館蔵書)