学長室だより

兵役が免除された新婚の男子

申命記24章5節に「ある人が新妻を娶ったときは、その者は兵役に就いてはならない。彼には何の義務も負わせてはならない。一年の間、彼は務めを免除されたまま自分の家にいて、娶った妻を喜ばせなければならない。」(私訳)とある。人道的な規定のようだが、現実的に子供の誕生を想定している。20章7節には「また誰でも、婚約し、まだその女性と結婚していない者があれば、その者が戦死して他の者がその女性と結婚することがないように、その者は自分の家に帰って行かなければならない。」(私訳)とある。戦争規定の中で、新しい家を建ててまだ奉献していない者、葡萄園の葡萄をまだ収穫していない者と共に、その者を戦列から外し、家に帰せと命じている。儀礼的に、軍隊が神から祝福を得られないと考えていたからである。
結婚に関わる規定は、神の祝福である子供の誕生を至上のこととしている。性行為による懐妊は分かっていても(創世記30章16節~17節等)、子供は神からの授かりものに他ならなかった。古代メソポタミアでも、子供の誕生(出産)が至上の幸福で、生をめぐる価値の中心にあり、子をもうけた妻を離縁する夫はすべてを失ったのである(エシュヌンナ法典59条)。(鈴木 佳秀)