学長室だより
2002年10月25日号
開学12年目となる本学の図書館の書架の間を散策していて、ようやく大学図書館らしくなったなと、嬉しくなることがあります。先週ふと、50年前に同志社のアーモスト館で聞いた東大総長矢内原忠雄先生の内村鑑三についての話を引用したくなり、研究室でアーモスト館発行の資料を探したのですが見あたりません。思いあまって図書館に行くと、『矢内原忠雄全集』全29巻が揃っていました。それは小嶋知子さんという篤志家からの寄贈図書でした。その第26巻に、「おのれを語る」と題して、「1952年5月2日、京都同志社大学アーモスト館創立20周年記念コーヒーアワーの座談会において(学生たちの質問に答えて)」という副題で、あの日の内容が再現されていました。これを読むと、50年前のアーモスト館広間いっぱいに学生を集めて、椅子が足りないため床上に座り込む学生たちに取り囲まれて、矢内原先生が語った一ときが活き活きと甦ります。今ならば、東大の総長が来たからといって、学生がホールいっぱいになるほどつめかけるという現象は多分起こらないでしょう。(北垣 宗治)