学長室だより

教養教育の一助として

敬和学園大学が教養教育を重視し、それを教育の根幹に据えていることはよく知られている。学長就任にあたって、比較宗教思想の講義担当を求められた。喜んで引き受けることにした。行政管理だけの毎日では、ストレスがたまると思えたからである。
教材として取り上げたのはマックス・ウェーバー『宗教社会学』(創文社)である。学生には難し過ぎると、ある親しい友人は懸念を口にしていた。難解とも言えるこの書物を、できる限り平明に解説することを考えた次第である。2年生が対象であるが、彼らに、宗教の構造や救済思想のカタを学んでほしいと思った。だがウェーバーの問題意識は強烈である。読み方によっては、これは宗教批判の書とも言える。そのため、予備知識のないまま聴講する学生たちには、刺激的すぎるかもしれないと感じたことは事実である。敢えてこの書を選んだのは、社会科学的な、客観的な視座で宗教を考察する知的なスリルを、彼らに味わってほしいと思ったからである。主観的と思われている神信仰を構造的に理解することは、教養教育に資すると確信している。
その意味で、解説する側にも緊張を強いる講義である。学生たちは、精霊信仰や呪術、霊魂、カリスマ等の説明に、戸惑いを感じているようであるが、徐々にウェーバーの世界にひたってくれると信じている。(鈴木 佳秀)