学長室だより
ルツとナオミ・その7
ボアズがルツに示した思いやり(ヘセド)は、思慕に近い気持からではなかったのです。未亡人であるにせよ、ルツは義母のナオミに従ってベツレヘムに渡ってきた女性ですから、レヴィラート婚の慣習から言えば、まだナオミの亡くなった息子の「妻」です。それを承知で、ボアズは細かな配慮や気配りをしていたのです。
ルツは日暮まで落ち穂を拾い続けることができました。一日でルツが集めたのは1エファ(23リットル)ほどであったと聖書は伝えています(ルツ記2章17節)。その袋を背負って帰宅したルツを見て、彼女を送り出す時に邪魔されるではないかと心配していたナオミが、目を見張ったのは当然でしょう。「今日は一体どこで落ち穂を拾い集めたのですか。どこで働いてきたのですか。あなたに目をかけてくださった方に祝福がありますように」とたたみ掛けるように語る言葉に、ナオミの驚きがにじみでています。
ルツは食べ残した物を差し出しながら「今日働かせてくださった方は名をボアズと言っておられました」と答えています(19節)。ナオミはボアズという名を聞いて、身体が震えるほど驚いたことでしょう。彼女はそこに、神の不思議な導き(摂理)を感じ、奇跡を目の当たりにしたからです。(鈴木 佳秀)