学長室だより

ダビデの物語・ダビデ王位継承史その3

「王は王宮に住むようになり、主は周囲の敵をすべて退けて彼に安らぎをお与えになった。王は預言者ナタンに言った。『見なさい。わたしはレバノン杉の家に住んでいるが、神の箱は天幕を張った中に置いたままだ。』ナタンは王に言った。『心にあることは何でも実行なさるとよいでしょう。主はあなたと共におられます。』」(サムエル記下7章1節~3節)。
ナタンは宮廷預言者としてダビデに仕えた人ですが、ダビデが神の箱に心を砕いていることを知り、心にあることは何でもしなさい、主なる神が共におられますと語っています。それは、かつてサムエルがサウルに告げたのと同じ言葉です(上10章7節)。カリスマ的指導者には神が共におられるという理解から、心にあることは何でも実行しなさいとナタンも語ったのです。
サウルはそれを誤って受けとめた結果、破滅の生涯を辿りました。ダビデの場合はどうでしょう。神によって王位に据えられたことを、ダビデは自覚していました(下7章18節)。ナタンに語っている言葉から、エルサレムに運び上げた神の箱について、まだしなければならないことがあるのではないかと心を砕いていたことが分かります。カナン人やペリシテ人と同じく、箱を安置する神殿を建てたいと願ったのです。それは、遊牧民でなく定住民の神礼拝のあり方でした。(鈴木 佳秀)