学長室だより

ダビデの物語・プロローグその3

サムエル誕生物語が、サムエル記上の巻頭を飾っています。時代が大きく変わる時代を、ある夫婦の物語から語り始めるのです。舞台は、カナンの地(現在のヨルダン河西岸地区)のほぼ中央に位置するエフライムの山地。そこに住むエフライム部族のエルカナ(「神は所有し給う」の意)の家族を紹介しながら、サムエル誕生にまつわるエピソードが語られます。
エルカナに二人の妻があり、一人はハンナ(「恵み」の意)、もう一人はペニナ(「珊瑚」の意)で、ペニナには子供があったが、ハンナには子供がなかったと紹介されています(サムエル記上1章2節)。二人妻婚の制度については既に触れましたが(2010年6月11日)、ハンナが最初の妻であり、ペニナがいわゆる第二妻ですが、彼女には子供が生まれています。子供を身ごもることのなかったハンナについて、「彼はハンナを愛していたが、主はハンナの胎を閉ざしておられた」(1章5節)と聖書は語ります。ペニナは彼女が愛されていることが許せなかったのでしょう。「彼女を敵と見るペニナは、主が子供をお授けにならないことでハンナを思い悩ませ、苦しめた」とあります。不妊の女性は祝福されていないと見られていたのです。(鈴木 佳秀)