学長室だより

ダビデの物語・ダビデ王位継承史その2

ダビデ王位継承史はダビデの後継者になるのは誰かを物語るものですが、サムエル記は、サムエル、サウル、ダビデの生涯を辿りながら、カリスマによる支配から世襲カリスマへと移行するプロセスを描こうとしています。カリスマ的指導者は、神ヤハウェからの召命に応える生涯を送った人でしたが、世襲制に移行することで権力基盤そのものが世俗化され、血統が意味を帯びる世界へと変わっていきます。そこに権力をめぐる闘争のドラマが生まれます。それぞれの皇太子に側近の部下がおり、個別の母親がいます。権力闘争は派閥の戦いにならざるを得なくなるのです。
ダビデ王には複数の妻がいました。隣国との平和条約を結ぶ際に、政略結婚の形をとったからです。「ヘブロンで生まれたダビデの息子は次のとおりである。長男はアムノン、母はイズレエル人アヒノアム。次男はキレアブ、母はカルメル人ナバルの妻アビガイル。三男はアブサロム、ゲシュルの王タルマイの娘マアカの子。四男はアドニヤ、ハギトの子。五男はシェファトヤ、アビタルの子。六男はイトレアム、母はダビデの妻エグラ。以上がヘブロンで生まれたダビデの息子である」(サムエル記下3章2節~5節)とあり、ドラマの主役たちが登場しています。アブサロムの母は隣国の王家の出でしたが、まだソロモンは生まれていません。(鈴木 佳秀)