学長室だより

ファンタジー文学への誘い

8月半ばを過ぎると、日中は赤トンボが飛び交い、朝夕めっきり涼しくなりました。
開学以来、毎年「オープンカレッジ」という名称で、公開講座を開催しています。その一つである児童文学のオープンカレッジは、7月4日で13年目を終えました。
毎年この講座では、絵本やファンタジー文学の優れた児童文学を紹介してきました。講師陣は、福音館書店相談役の松居直氏、児童文学作家で福音館書店元編集者の斎藤惇夫氏、児童文学研究家で訳者の吉田新一氏と清水眞砂子氏というキラ星のような方々が担当し、毎年100人前後の聴衆を集めてきました。
今年は斎藤敦夫氏が「わたしの好きなファンタジー」と題して、子供のころから語り聞いた昔話や神話、少年時代からの読書経験より語ってくださいました。この中では児童文学の「グレート・ブックス」とも言うべき、読むべき本が網羅されていました。ファンタジー文学が人間の想像力を育てること、子供への読み聞かせが「すきとおったほんとうのたべもの」(宮沢賢治)として子供の心を育むことを改めて確認しました。
講演の後で斎藤惇夫著『わたしはなぜファンタジーに向かうのか』(教文館、2014年)も読みました。「私は書かなければならない。さもなければ胸が張り裂ける」(I must write or-burst.)というC.S.ルイスの言葉に動かされて著作されてきたことを知りました。これはどんな著作にも通じることだと思います。(山田 耕太)