学長室だより

『戦争と平和』を読んだ夏

先週は新潟県下越地方と山形県南部に初めて線状降水帯が現われ、記録的な集中豪雨となりました。新発田市内でも一時的に道路に水が川のように流れるようになりましたが、水が引くのも早かったです。被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。

今年も広島原爆投下の8月6日、長崎原爆投下・ソ連参戦の9日、敗戦の15日が巡ってきました。このような核廃絶により平和を希求すべき時に、核保有大国が核爆弾の使用をちらつかせながらウクライナ戦争が半年近く続くという未曾有のできごとが2月24日以来続いています。

広島女学院大学主催の「8.6平和学習プログラム」に、敬和学園大学の学生も参加しています(2019年8月6日撮影)

広島女学院大学主催の「8.6平和学習プログラム」に、敬和学園大学の学生も参加しています(2019年8月6日撮影)


 

56年前の高校1年の夏休みのことです。夏休み中に読み切れるか迷いつつ、私はトルストイの『戦争と平和』を買い求めました。バスケットボールのクラブ活動の合間に文庫本8冊を3週間余りで何とか読み切りました。数百人の登場人物が複雑に絡み合う筋より主人公の筋を追うことに途中で変えました。19世紀のナポレオン戦争下で、いかに戦争に抵抗して生きていくのかというテーマをトルストイは描いていました。

後にトルストイはアウグスティヌス『神の国』の歴史哲学を19世紀ロシアに展開したという著作意図を知りました。32年前に聖籠・新発田に移り住みました。間もなく訳者の原久一郎が水原出身の旧制新発田中学出身と知って、瓢湖に近い水原図書館を訪れ、原久一郎文庫を見てホッとしました。最近になってプーチンに最も影響を与えた本が『戦争と平和』だと知って、極めていぶかしく思っています。(山田 耕太)