チャペルのひびき

あなたは必要とされている

チャペル・アッセンブリ・アワーは、新入生歓迎公開学術講演会として守られました。小河陽先生(前関東学院院長)をお招きし、「AI時代のリベラルアーツ~伝統の継承と創造性~」との題のもと、お話を伺う機会を与えられました。AIが人間の多くの活動に取って代わるかのように思われる時代にあって、リベラルアーツ教育の意義とは何かということについて、先生は、深い学識から、豊かな説得力をもって語ってくださいました。リベラルアーツ教育の意義は、有機的な知の連関性の中での自らの学びを深めることにより、物事の、あるいは、自らが取り組むことの価値(意味)を見出し、付与し、創造してゆく力を養うことにあるとのこと。別の言葉で言うなら、物事の意味を見出し、判断する文脈力を培うことにあるといってもよいかもしれません。万能であるかに見えるAIの盲点は、意味を与えることができないことにあり、AIをはじめとする技術だけが進歩し、意味が喪失されてゆくかもしれない世界の中にあって、リベラルアーツ教育の意義はますます大きくなるだろうとのお話でした。ご講演後の質疑応答の際、学生から「先生にとって生きる意味とは?」との質問に対して、「人から必要とされることこそが、私にとっての生きる意味だ」とおっしゃっておられたことも、心に残りました。シンプルなそのお言葉を通して、人が生きることの意義とは、人に仕えること(そのことを通して神に仕えること)にあるとの、本学のキリスト教主義教育の核心に触れていただいたように思います。C.A.H.の意義が、「あなたは必要とされている」との聖書からのメッセージを響かせることにあることも覚えていただけたら幸いです。(下田尾 治郎)

講演 新入生歓迎公開学術講演会「AI時代のリベラルアーツ~伝統の継承と創造性~」 立教大学名誉教授、前関東学院院長 小河陽 先生
20190412新入生歓迎公開学術講演会1

<参加学生の感想>
感想1) AI時代におけるリベラルアーツ教育を考えることは、私たちの生活を意味ある、価値あるものにするために必要なことだと思います。近年AI技術が向上してきてAIの性能が上がっています。ですが、AIは過去の膨大な情報の中から選んでいるに過ぎず、意味は考えていないのです。AIは人間の偏見が作り出したもので、現代にある新しい価値を創造することはできない。私たちは合理的に物事を考えてしまいがちですが、それは、意味や価値を失い、誰がやっても結局同じものになってしまいます。リベラルアーツ教育はそのような時代にこそ、意味や価値を与え生活するために必要なことだと思いました。
感想2) 小河先生のお話を聞いて、リベラルアーツのこの大学を選んでよかったと思いました。1つの分野だけを学んでいては知ること、学ぶことのできない知識がたくさんあります。リベラルアーツを学ぶこの大学では友人同士でも学んでいること、知識が全く異なりたくさんのことを学ぶことができます。将来、仕事は機械化、AI化が進んでいく中で、AIは判断することはできても、意味を理解することはできないという弱点を聞き、その弱点を踏まえた上でそれをうまく使っていくことが大切だということが分かりました。
感想3) リベラルアーツ教育がどのようなものなのかよく分からなかったのですが、小河先生のお話を聞いて、単なる教養教育だけでなく、専門分野を学び、その知識をほかと関連づけて全体を構造することで初めて価値が見出せることが分かりました。例えば、ダイヤモンドという物体はそのものだけでは価値があるか分からないが、他の何かと比較してその価値が分かります。言葉でも同じ、文化や生活などのつながりによってはじめて理解できるということです。