学長室だより
2003年8月29日号
七夕の日の早朝に、信州・小諸で、ある農業指導者が91歳の天寿を全うした。知らせをうけて、告別式で「お別れの言葉」を述べるべく、13日(日)には小諸まで往復した。久しぶりに仰ぐことを楽しみにしていた浅間山は、行きも帰りも、雨に煙って姿を隠したままであった。この地を敬し、この地の人びとを慈しんだ古老の長逝に、大自然も静かに涙するのか、との思いがした。キリスト教の信仰と農業者魂に立ったこの地方素封家の生涯を思い、悲しさのなかに、特別の感謝のみなぎる葬儀であった。
敬和学園の重要な事務を担当する方のお父上が亡くなり、その告別式に列するために、7月15日に、山深い峠を越えて、隣県山形の小国町をたずねた。教務課長さんが運転する豪華な自家用車で、4人が連れていってもらった。近親との別れには、口で表現できない悲痛がある。ふだん労をわかちあう友と、悲しみの場で会い、その悲しみを分かちあいたかった。
山の古寺への往復で、胎内(たいない)方面を指示する標識を何回か見た。胎内は4月末に、新入生オリエンテーションを催した所であり、新しい世代の新しい出発の所であったな、と思い出していた。(新井 明)