学長室だより

2003年12月12日号

来春、共生社会学科が創設される記念として、9月13日に前日本銀行総裁・速水優氏にお出でいただき、「明日の日本を考える」というご講演をしていただいた。新発田市民文化会館に、予想外の300名近くが集まり、水をうった静けさのなかで時を過ごした。ご長兄がキリスト者らしく召され逝く姿を見て感ずるところがあり、阿佐ヶ谷教会の大村勇牧師(やがて敬和学園の第2代理事長になられる)より、1945年暮れに洗礼を受けたこと。日本銀行、日商岩井と歩き、経済同友会代表幹事を引き受けるときには、「奉仕と献身」の意を固めたこと。1998年に日銀の総裁に決まるときには、「恐れるな、わたしはあなたと共にいる」という御声を聞きつつ、身を処してきたことなどを述べられた。そのあとで、速水氏は、いま日本は世界の市場統合にむけて、グローバルな目をもって構造改革を押し進めて行かなければならない、と説かれた。「眠れる10年」のあいだに弱体化した企業は、新しい強い起業家精神をもって道を切り開いてゆかなければならない。(政府によるやたらな金のばらまきは、後に禍根を残す。)これはマックス・ウェーバー流の「資本主義の精神」の現代化の提唱をなさったことになる。
「恐れるな」という御声を内に秘めつつ発せられる、預言者的な勧告の声を聞く思いがした。(新井 明)