学長室だより

2006年9月15日号

一昨年の初秋に私立大学連合の20周年記念式典に出席したおりに、小林陽太郎氏の講演を聴いた。富士ゼロックスの相談役でもあり、経済同友会の代表幹事まで務められた経済人である。大学の使命は企業の即戦力なる青年たちを生産するにあり、というくらいの話となるのであろう、と考えていた。ところが、驚いた。教育の目標は、まず企業に役立つ人間の成育ではなく、「人間個人の尊重、展開にあり」という内容の、つまり「自由高等教育」の推奨の論であった。
今年はどうしてもこの小林氏に新発田にお出でいただき、学生たち、市民たちに直接にその教育論を披瀝していただきたかった。本年7月22日に、敬和学園大学人文科学研究所主催のかたちで、「共生の時代の教育―リベラルアーツの可能性」を語っていただいた。そのあとで、研究所長の松本ますみ教授の司会で、山田耕太教授、鈴木佳秀・新潟大学教授、鈴木聖二・新潟日報社編集委員によるパネルディスカッションが催された。
新発田市民文化会館の講堂に200名をこえる人びとが集まった。長岡から電車で来られた老婦人が、深き感銘の言を漏らされるのをうかがった。(新井 明)