学長室だより

あれから20年

大学の周りの田んぼでは、黄金の稲穂が頭を垂れて刈り入れを待っています。今年は昨年やおととしのように8月の気温が40度近くに上がることもなく、また台風などによって稲穂が倒れることもなく、見事な豊作です。年に一度の輝くばかりの黄金の光景です。眺めているだけで豊かな気持ちになってきます。

しかし、この世の中の動きは大自然の豊かさとは極めて対照的です。20年前の9月11日にニューヨークの国際貿易センターをはじめとしてアメリカ同時多発テロが起き、テロに対する報復戦争、首謀犯のアルカイーダ掃討作戦としてアメリカ軍がアフガニスタンに侵攻してタリバン政権を倒して駐留し続けてきました。10年前には首謀者とされるウサマ・ビンラディン容疑者を殺害した後も、アメリカ軍はアフガニスタンに駐留し続けてきました。そして、8月末に混乱の中でアメリカ軍が撤退して、タリバンが再び政権を握ってアフガニスタンを統治しようとしていることです。

2017年10月16日にオレンジ会の支援で学生たちと訪れたグランド・ゼロ(国際貿易センター跡地)

 

ここから学ぶことは何でしょうか。復讐は復讐の連鎖を生むだけで何の解決にもならないということです。軍事力や武力による支配でなく、人々が最も必要としているものを届けることが大切です。それはアメリカの軍用機が飛ぶ下で、アフガニスタン人への医療から運河を作って砂漠を緑の大地に変えて食料調達できるようにした中村哲医師のような働きこそが必要とされるのです。中村医師は2年前に何者かによって殺害されましたが、ペシャワール会の働きは数多くの無名の支援者によって今も変わりなく継続されています。(山田 耕太)