学長室だより

2021年度前期卒業式式辞(山田耕太学長)

山田学長からの式辞

 

皆さん、敬和学園大学ご卒業おめでとうございます。ここまでの道のりには人には言えないさまざまなご苦労があったと思います。その上に、この1年半は新型コロナウイルス禍による「パンデミック」すなわち世界的な大流行という100年前のスペイン風邪以来のできごとの中での通常の困難さの上に、移動の自由が制限されたりアルバイトができなくなったりして経済的にも苦労することが多かったことと思います。そのような中でも大学を無事に卒業することができたことであらためておめでとうございますと申し上げます。
 
しかし、若い日に苦労することはよいことです。困難を乗り越えていくことによって、成長していくからです。そして困難を経験する以前よりも一回り人間が大きくなっていくからです。これは大自然の営みの中でも見られることです。樹木は春から夏にかけて太陽の日差しを受けて、枝も伸びて緑の葉を茂らせ、秋になると葉を落として、冬の寒さという困難に耐えしのいで、再び春が来ると若葉をつけます。その1年の間に幹は前の年より一回り大きくなって年輪を重ねていき、また枝は伸びて成長していくのです。

春に入学した人は入学した直後に植樹式を経験したと思います。皆さんの入学した時は時計台の下でユリノキを植えました。秋に入学した人は植樹式を経験しませんでしたが、皆さんが入学した年の木が皆さんの木なのです。すなわち、2016年に入学した人は2016年の木が、2017年に入学した人は2017年の木が、自分の木なのです。植樹式は新井学長時代の2004年からはじまり、現在も毎年植樹式をしています。時計台の下のユリノキ林を見ると、10年も経つと立派な木になります。校舎のニューエル館の3階の高さまで伸びて枝を張っています。しかし植えて5、6年はまだ若木で枝もまだ細いです。

すなわち、大学を出て1、2年から4、5年はまだ若木のようで、雨風にさらされて、冬の寒さに耐えしのいでいくと、若木がしっかりと根を張って幹が次第に太くなり、大空に向かって成長していくのです。今この学び舎を巣立っていく皆さんに、はなむけの言葉としてⅠコリント書の13章13節の言葉をお贈りします。「それゆえ、信仰と、希望と、愛、この3つはいつまでも残る。その中で最も大いなるものは愛である。」

 第1に「信仰」です。この言葉は「信頼」とか「信用」とも訳せる言葉ですが、簡単に言えば「信じることです」。社会に出て一番大切なことは、「信頼」や「信用」です。相手が「信頼できる人」か「信用できる人」か、ということも大事です。しかし、それよりも大切なことはあなたが「信頼できる人」「信用できる人」になることです。そのたった1つの秘訣は何か。それは約束を守ることです。自分が相手に言ったことは必ず行うことです。「信頼」とか「信用」は、人と人との関係を指す言葉ですが、人と神との関係を指す場合は「信仰」と言います。

第2に「希望」です。希望とは「望みを持つこと」です。どんな状況の時でも「望みを捨てない」ことです。「過ぎ去った時」である「過去」にとらわれて現在の自分を見るのではなく、「将に来たらんとする時」である「将来」から現在の自分を見るという見方をすることをお勧めします。おぼろげながらでもよいから将来こうなりたいというビジョンを描いて、逆にそのために今具体的にどうすべきかを考えてやってみることをお勧めします。

第3に「愛」です。「愛」にはいろいろな形があります。友達同士の愛である「友情」(フィリア)、親子の愛や兄弟姉妹の愛である「家族愛」(ストルゲー)、男女の愛である「性愛」(エロース)、神の人間に対する愛である「犠牲の愛」(アガペー)。人間生活を営んでいくので最も大切なのは「愛」です。仕事をしていく上でも、社会生活や家庭生活を営んでいく上でも、相手のことを配慮していくこと、相手に仕えることも「愛」の形の一つです。どんな職業についてもそこで人に仕えること、サービスすることを心掛けていきましょう。それよりももっと大切なことは、あなたが意識しようが意識しまいが、大いなる神がおられて、あなたがどのような時でも、いつもあなたの命と存在を支えていてくださることです。そのことを忘れずに心に刻んでおいてください。

「信仰と希望と愛、この3つはいつまでも残る。その中で最も大いなるものは愛である。」皆さんが敬和学園大学で学んだこととそこで得た友人が皆さんの将来の宝となり、幸せな人生を送られますようにお祈りいたします。

2021年9月15日
敬和学園大学長 山田耕太