学長室だより

2022年度入学式式辞(山田耕太学長)

式辞を述べる山田学長

式辞を述べる山田学長

 

新入生の皆さん、保護者の皆さん、敬和学園大学ご入学おめでとうございます。久しぶりに入学式にふさわしい晴れの天気になりました。大学のキャンパスではおととしと昨年の新入生がコロナ禍の中で入学直後に植樹した河津桜と寒緋桜も満開です。皆さんもゴールデンウィーク直前に河津桜と寒緋桜を入学記念に植樹する予定です。河津桜と寒緋桜に続いて染井吉野、しだれ桜、八重桜と104本の桜の花が皆さんを歓迎するかのように次々と咲いていきます。キャンパスでの桜シンフォニーをぜひお楽しみください。

新入生の皆さんは高校での2年間はコロナ禍の中で普段とはかなり違った高校生活を送ってこられたのではないでしょうか。この大学は全学生数が750人前後の小規模な大学で、その4割近い学生が大学の近くに住んでいることもあり、全面的に遠隔授業をしたのは2年前で6週間、昨年度は9月から10月の2週間と1月の10日間だけでほとんどの授業は感染対策を十分にして対面で行いました。今年度も原則的に対面で授業を進めます。

本学の在学者は750人前後ですが毎年前期・後期合わせて600以上の科目を提供しています。そこには3つの教育方針が貫かれています。第一に一人ひとりの存在を大切にするキリスト教教育、第二に、国際的な視野を養う国際理解教育、第三に地域社会に貢献する地域貢献教育です。毎年卒業生が卒業する時にアンケートを取っています。敬和の大学教育で一番何を学んだか何が身についたかで、毎年トップに挙げられるのは、人権教育・人権感覚であることに私は驚かされます。なぜかというとどの授業でも人権・人権と言っているわけではないからです。学生たちが授業で取り上げるさまざまな問題の背後に人権問題があることを敏感に感じ取っているのです。

ウクライナでのロシアの侵略戦争が始まって40日がたちました。21世紀の現代に「こんなことがあっていいのだろうか」という目を覆いたくなるような惨事が次々と報道され、日に日にその残虐さが増しています。戦争は最大の人権侵害です。ロシアがウクライナで行っている戦争は明らかにジュネーブ条約に違反する戦争犯罪です。

フランス人権宣言、アメリカ合衆国憲法、世界人権宣言などの流れの中にある日本国憲法の基本的人権の尊重思想の源はどこにあるのでしょうか。それは創世記1章26節の「人間は神のかたちに創造された」という言葉にあります。英語では「神のかたち」を“the image of God” と言います。旧約聖書の詩編8編の詩人は、神に極めて劣ることを認めた上で「神のかたち」を「神の代理人」と解釈して人間には大自然を管理することが委ねられたことを歌っています。現代流に言えば環境問題や地球温暖化を防いで地球を管理することが人間に委ねられているとなります。また人間は「神のかたち」なので、年齢・男女・能力・貧富・人種・肌の色の違いや障害の有無を越えて「すべての人は等しく尊い」のです。「みんな違ってみんないい」多様性は豊かさの源です。

皆さんの多くは18歳であると思います。今年4月から18歳が成人の年齢になりましたので、成人としての自覚と責任が増してくるようになります。日本人の平均寿命は、男性は81.64歳、女性は87.74歳です。平均寿命で考えると男性で63年、女性で69年生きることになります。この大学4年間は、平均で今後60年以上生きる人生の土台をつくる時期です。大学での学びがあなたの人生の土台をつくっていくことを忘れないでください。

大学での学びを楽しくする秘訣は先ほど読んでいただいた聖書の言葉「求めなさい。そうすれば与えられる。探しなさい。そうすれば見つかる。門をたたきなさい。そうすれば開かれる」(マタイ7:7)にあります。小学校・中学校・高校では、しばしば教師が教えることを受け身で受けてきました。大学では自分から積極的に「求め、探し続ける」探求心を絶やさないでいるとおのずと道が「開かれてくる」のです。このような積極的な学びの姿勢を持つと大学は面白いところになります。この大学は、地域社会でのボランティア活動やアクティブラーニングやインターンシップなどの実践的な学びの場をたくさん用意しています。積極的に加わってみてください。

人間はたった一度しか生きることができません。人との出会い、学びとの出会いが一生を方向づけます。大学生活を通して、より自分らしい生き方とは何か、私は何をするために生まれてきたのか、人生で私は何をしなくてはならないのかを考えながら学んでください。皆さんお一人お一人が幸いな人生を送られることを心からお祈りいたします。

2022年4月5日
敬和学園大学長 山田耕太