キャンパス日誌
【学生レポート】サンタ・プロジェクト・しばた ~試練が導いてくれた私の生き方~
サンタ・プロジェクト・しばたはクリスマスの時期に病院で過ごす子どもたちへ本を贈る取り組みです。
このプロジェクトは、敬和学園大学の山﨑由紀先生のアメリカでの経験をもとに、本学と地域の書店、病院が協力し、2008年にスタートしました。
在学中、運営に携わってきた川崎千夏さん(英語文化コミュニケーション学科2018年度卒業)からのレポートをお届けします。
私がサンタ・プロジェクトの活動に関わった4年間、一言では言い表すことができないほどさまざまな試練があり、それらを幾度となく超える喜びがありました。卒業を迎えた今、この4年間の活動を振り返りたいと思います。
私がはじめてサンタ・プロジェクトの活動に参加したのは、1年生の12月でした。1年生の時から「俺たちのバイブル」(以下、俺バイ)というサークルに所属しており、サンタ・プロジェクトは、その俺バイと「Art Style of Keiwa」というサークルの共同での活動であったことから、その流れで活動に参加しました。
はじめは活動内容やその流れが把握できず、当時の部長の指示に従って、最後の梱包作業のお手伝いをすることで精一杯でした。そうして、活動に本格的に参加しはじめたと思えたのは、翌年2年生になってからでした。
そして、これから活動に一生懸命関わって行こうと思い、意気込んでいたさなか、私を最初の試練が襲いました。それは、2年生の夏休みに、メンバーの顔合わせを目的とした合宿での出来事でした。合宿中にある問題が起こり、メンバー同士の信頼関係が崩れ、サンタ・プロジェクトだけでなく、俺バイの継続も危ぶまれる事態となってしまいました。
参加した私たち一人ひとりの言動、それぞれの受け取り方によって、この問題は、さまざまな憶測が広がり複雑化していきました。合宿後も当時の部長と口論になったりと、心が切り裂かれそうな日々を過ごしました。しかし、時間が経ち、私たちも冷静さを取り戻すことができ、話し合いの時間をつくりました。そこで、この問題の根本に立ち戻ることができ、和解することができました。
それから、気持ちを切り替えてその年度のサンタ・プロジェクトに取り組むことができました。昔からものを作ることが好きな私は、子どもたちに本と一緒に贈る「メッセージカード」と、本を買ってくださった方に感謝の気持ちを込めてプレゼントする「サンタ認定書」を夢中になって作りました。
はじめて本格的に活動に参加したといううれしさもあり、熱が入り過ぎて、例年以上に費用と作業時間を取ってしまいました。しかし、みんなでアイデアを出し合って作業をすすめる時間、そしてそれらが完成して受け取ってくれる人がいることは何にも勝る喜びでした。
そうして、2年生の活動が成功裡に終えられて達成感で満ち溢れていた3年生の春、話し合いの結果、私が部長に任命されました。そこで、これからの活動について関係する先生方とお話をする時を持ちました。私はこれからの活動が不安でしたが、そんな時にも多くの人からの支えと励ましがあり、活動を続けることができました。
その後も学生同士の連携の難しさや書店、病院、施設の方々とのプロジェクトに対する認識のズレなど、悩むことも多くありましたが、そのたびにたくさんの恵みを感じ心の奥底から幸せが湧き出てくる思いを幾度となく経験することができました。
その後は、新しい風が吹きこんできたように、サンタ・プロジェクトの活動の輪が広がりはじめました。その年の活動は、新しく1ヶ所の書店が増え、はじめて児童養護施設に本を贈ることができました。これまで、感染症の危険があることから、病院では本を子どもたちに直接渡すことができていませんでした。
しかし、児童養護施設に本を贈ることが決まってから、直接子どもたちに本を渡すことができるようになり、本を受け取る子どもたちの喜ぶ姿をはじめて見ることができてプロジェクトのやりがいをさらに感じることができました。
4年生の夏には、新潟が主催でサンタサミットが開催されました。チラシの作成、プログラムの構成、参加者名簿の収集や当日の会場準備や片付け、進行なども学生が行いました。主催者側としてサンタサミットに参加するのははじめてでしたが、先生方にサポートしていただきながらやり遂げることができました。
そして、その年はさらにうれしいことが起こりました。それは、病院に入院していた時にサンタ・プロジェクトで本を受け取った子が、敬和学園大学に入学し、プロジェクトに加わってくれたのです。活動に意欲的な後輩が与えられ、心強いメンバーと共に、その年のプロジェクトは本の贈り先の児童養護施設がさらに2ヶ所増え、はじめて115冊という数の本を子どもたち一人ひとりに贈ることができました。
また、地元の企業の皆さまを対象とした大学の大きなイベントで、サンタ・プロジェクトの活動を発表する機会をいただきました。さらにNHKさまや新潟日報社さま、エフエムしばたさまなど多くのメディアの方々から取材を受け、サンタ・プロジェクトの活動を多くの方々に知っていただくことができました。そのほか、目標としていた書店、病院、施設の方々を招いての反省会をはじめて開くこともできました。
サンタ・プロジェクトをはじめた大澤秀夫先生がサンタサミットで必ず言われる言葉があります。それは、「子どもたちが中心であること。それだけは決して変えてはいけない。」という言葉です。この言葉には、大澤先生の子どもたちを大切に思う気持ちが表れていて、その深い愛情にいつも感動します。
これまでの4年間を振り返ると、子どもたちではなく自分たちの事情を優先していたと気づかされます。そう思えるのは、2年生、3年生で経験したあの大きな試練があったからです。今では、見失いかけていた大切なことに気づかされ、子どもたちを中心に置き、一つひとつの活動に誠心誠意取り組むようになりました。
私は、敬和学園大学を卒業後、幼児教育を学ぶために短期大学に入学します。4年間での出会い、そして経験を通じ、多くの気づきと学びがありました。その中で、私は子どもたちの前で正直でいられる大人でいたいと強く思わされました。
心を開きそのままの自分自身の姿で子どもたちと接し、ごまかさずに真正面から子どもたち一人ひとりと向き合っていきたいです。子どもたちが安心して伸び伸びとその子にしか持っていない種を芽生えさせ花咲かせられるように、決して見放さず深い真の愛情を注ぎ続けていきたいです。
これからはじまる2年間の学びと子どもたちとの出会いが楽しみです。サンタ・プロジェクトでの4年間の葛藤が、私のこれからの生き方を一つ示してくれました。これからも、さまざまなことがあると思いますが、自分の存在が一人でも多くの子どもたちのために用いられるように、生涯を通して疑問を持つことを恐れずに、悩み考えて学び続けたいです。
(英語文化コミュニケーション学科 2018年度卒業 川崎千夏)