学長室だより
2006年6月2日号
「明日への試み」をめぐって、『全私学新聞』の取材をうけたのは、4月下旬のことであった。聞き手は日塔喜一氏 (機会均等等研究所代表)。同紙改題創刊30周年を記念しての一連の連載の初回インターヴューだという。日塔氏の設問は多岐にわたったが、まず最近進められている教育基本法「改正」の問題であった。改正案でも「個人の尊厳」の文言は残し、「他国を尊重する」なる表現は入れてある。しかし新理念として「公共の精神」と、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」という考え方を強調する。教育の現場で国旗、国歌が強制されている現実とつき合わせてみると、日本の教育が「いつか来た道」を歩み出したという危惧を拭いきれない、と語ると、日塔氏は「バベルの塔」ですね、ととらえた。まさにそのとおりである。日本のあちこちに「塔」は立つ。そのひとつは、疑いもなく、いま教育の野にれんがとアスファルトをもって築かれようとしている「塔」である。(新井 明)