学長室だより

「市民社会の精神としてのリベラルアーツ」

国際基督教大学名誉教授の千葉眞先生

 

桜の開花と共に新入生と編入生の皆さんが敬和学園大学に入学されて3週間がたちました。新入生の顔に笑顔が見られ楽しそうに友達と話す姿や、朝8時から桜の花びらが舞う中、構内を走るバドミントン部の姿を見ると、微笑ましい気持ちになり心の中でエールを送っています。今年の新入生歓迎公開学術講演会では、国際基督教大学名誉教授の千葉眞先生より、「現代とリベラルアーツ教育―市民社会の精神としてのリベラルアーツ」と題してご講演いただきました。リベラルアーツを個人の成長の観点からではなく、市民社会という文脈で「人間尊重の価値を高めていく社会とはどのようなものか?」との観点から、現代におけるリベラルアーツのテーマと課題、そして可能性について語っていただきました。これだけ個人主義、自国第一主義が大勢を占める世の中で、寛大でリベラル、正義や平和を重んじる社会とはどういうものか?リベラル教育と「市民社会」や「市民」に関する理論や定義を歴史的にたどりながら、市民社会ならびに市民社会論そのものの成長を丁寧に教えていただきました。格差や分断が深まっているとはいえ、消費者運動や環境運動などにも見られるように、日本においても確実に市民社会は成長しているように思います。講演では、どんなに有名な学者の理論でも、時代とそぐわなくなってきている面や「上から目線の批判」などを指摘され、一つの理論を絶対化しない、権威主義を排除した自由で開かれた千葉先生の考え方にリベラルアーツのスピリットを感じました。終始、リベラルアーツ教育を社会の中に位置づけ、「教育のartはよく生きることのart」というハンナ・アーレントの言葉を最後に紹介されました。自分がよく生きることを目指すことは、ほかの人もよく生きられる社会を目指すことですね。「平和・人権・共生」を重んじる敬和学園大学の使命をみんなで再確認でき、幸いでした。(金山 愛子)